ⅩⅣ 仮面を被る時
第108話 仮面を被る時 ①
雲が多い夜空を、居待月が雲の向こうから覗いているように見える。月光が時折、新都の街並みを淡く照らし、幻想的な風景を作り出していた。月読高校の入り口近くにある浮遊バス停では、運転情報ボードが「19:25」を示している。
高空から浮遊バスが静かに降り立ち、その扉が開いた。乗客が降りる気配もなく、乗り込む人もわずかだった。バスの明かりが停留所のベンチを照らすと、そこにはラベンダー色のワンピースを着た少女が座っていた。腰の位置に大きなリボンを結んだその姿は可憐で、艶やかな黒髪が光を受けて美しく輝いている。彼女はバスに乗る気配を見せず、何かを待っている様子だった。そのため、バスは扉を閉じると再び浮上し、夜空に飛び去っていった。
再び闇に包まれたバス停。広告パネルの微かな光が逆光となり、少女の顔を淡く照らしている。彼女は下を向き、ヒールのない靴をじっと見つめた。しばらくして顔を上げると、通学路の坂道を遠くに見つめた。
坂道では亮が街灯に照らされながら走っている。時間に余裕があると思っていた彼は、遠くからバス停に座る少女の姿を見つけると、スピードを上げた。
少女はベンチから腰を浮かせ、亮の到着を迎える。彼女は控えめな笑みを浮かべ、小動物のようにか細い声で挨拶をする。
「こんばんは。予定より早く来ましたね?」
走りを止めた亮は息を整えながらも、体力には余裕がある様子で、笑顔を浮かべて答える。
「用心棒として守る相手より先に来るのが俺の仕事だ。……とは言え、葉月さん、こんなに早く着いてたなら連絡してくれれば良かったのに。」
「警備員の巡回時間は決まっていますし、調整する必要はないと思いました。それに、こんな時間に呼び出してしまって申し訳ありません」
「謝る必要なんてないだろ。昨日約束したことだからね。それじゃあ、散歩のペースで向かいましょうか」
「はい。用心棒、よろしくお願いします。」
「任せて」
少女は一歩半ほど前を歩き、亮はすぐ後ろについた。やがて学校の正門近くに差し掛かると、少女はそのまま進もうとする。
「えっと、葉月さん。こっちから入るんじゃないか?」
「私たちの目的地は部活棟です。正門から入るのはリスクが高いんですよ。」
「それじゃあ、どうやって入るんだ?後門から?」
「うちのメイドに相談しました。正門に後門じゃなくて、神社の方から行きます。」
「なるほど、神社の参拝道を通るんだね。それなら確かに部活棟に近い。でも、監視カメラが設置されているはずだよな?」
「その点は心配いりません。情報部に頼んでおきましたから。この時間帯は学校の監視カメラが撮れないようになっています。」
「さすがだ。でも、あの壁の高さは結構あるよ?」
「私はテニス部で鍛えていますから、それくらい飛び越えられます。」
亮は彼女のワンピースの裾をちらりと見た。上品で礼儀正しい彼女が、校則違反に近い行動をとるとは想像もできなかった。
――こんな格好で本当に乗り越えられるのか? ……そもそも、どうして彼女のメイドさんがそんな無茶を許したんだ? それほどまでにギフトを取り戻したいってことか。校則違反をしてまで……こんなことがあいつに知らせたら感動過ぎて泣けるだろな。
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