第95話 手紙

 私には中学生の娘がいる。

「雅美、珍しくずっと机に向かってるんだって?」

「そうなのよ」

「何をしているんだ?」

「退任する先生へのお別れの手紙を書いてるんだって」

「手紙? へー、よっぽどいい先生だったのか」

 部屋を覗くと、娘は眠ってしまっていた。

 そして机にその手紙用らしき便箋があり、こう書かれてあった。

〈家電って、故障すると、こんなに長い期間使ってたんだ! って、びっくりしますよね〉

 それ、別れの手紙に書くようなこと?

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