第19話 形なし

 映画監督の私、藤堂衛には、わからないことがある。

 どうして多くの作品で、役者に限らず、キャストに有名人を起用するのであろうか?

「主演が嫌いだから観ない」となったり、中身を純粋に評価してもらいにくくなるだろうに。

 まあ、要は集客のためであろう。

 しかし私は無名の人を使うことにこだわり、それでいてヒットを飛ばしてきた。

「ねえ、柊子。この映画、面白そうじゃね?」

「あ、でもこれ、監督が藤堂じゃん。あたし、嫌いだから観ない」

「ほんとだ。今、気づいた。私もあいつの好みじゃない」

「知ってる? こいつ、毎作、売れない女優の自分の娘を出してるんだよ。親バカー」

 ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る