きのう ~Yesterday~

古村あきら

序章

 あの日、僕は子供だった。

 たかだか十五年の人生経験をもって世の中のすべてを分かったつもりになり、守られていることにすら気付かなかった。人間なんて所詮しょせんはこんなもの、とはすに構えていきがっていた。

 人の想いや、誰かの痛みや、知っているつもりの多くのものは、教科書に書かれた文字を読むように実感を伴わない知識でしかなかった。

 何も知らず人生を諦観ていかんしていた、あの日の僕は、確かに子供だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る