僕の人生逃避行
@hatopopo2232
第1話
「あんたのせいで...!」
そんな声と同時にお皿の割れた音がする。
いつからだろう、あんなに優しいお母さんが怒るようになったのは。
いつからだろう、お母さんが家に帰ってこなくなったのは。
いつからだろう、お父さんが何も言わなくなり、お母さんから暴力を受けるようになったのは。
僕は全部知っている。
どの出来事も、最初の原因は全て
僕の些細なミスからなのだと。
「ぃろー!」
「起きろオラァ!」
「グフッ」
大きな声と同時に、頭に強い衝撃が走る。
「痛ってーな!何すんだよ」
そう言いながら顔を上げると、そこにはポニテールをなびかせながらこちらを軽蔑の目で見ている幼馴染の山田莉緒がいた。
「ホームルーム終わってみんな帰ってんのに起きないから起こしてあげたんだよ。私に感謝しなよ?」
彼女は笑いながらそう言い、教室から出ていこうとする。
「じゃ!あたしは帰るから!あんたも早く帰りなさいよー」
「なぁ莉緒」
そう言って僕は彼女の足を止める。
「んー?」
「俺らって友達なのかな?」
今見ていた夢のこともあり、ついそんなことを聞いてしまう。
「ん〜」
彼女は一瞬悩んだ素振りをして僕に言う。
「どうだろうね〜。だってあんた私の事頼ってくれないしな〜?」
「うっ」
つい痛いところをつかれてしまう。少し気まづそうな僕の表情を見て、彼女は笑いながら言う。
「冗談だよ〜。まぁあんたが頼ってくれない理由も知ってるし、それでも私は仲良くしていきたいからさ、」
そう言って満面の笑みで僕に言う。
僕の気持ちを見透かしているかのように
「これからもよろしくね!」
そう言って彼女は今度こそ教室を後にしていく。普通の人間なら惚れてしまいそうな場面だが、僕にはそんな気持ちは微塵も湧かない、ただ、他の人とは違い、悪い感情も湧いてこない。彼女は僕の過去の事情を知っている数少ない知人だ。僕はいまさっき自分から友達かどうか聞いておいて、僕は彼女のことを友達とは思えないでいる。信頼して、もし裏切られた場合、僕は今度こそ立ち直れなくなってしまうからだ。
「はぁ〜」
そんな自分に嫌気がさして、僕はため息を着く。
こんな時は気分転換をしに、屋上に行くと決まっている。僕は重い足取りで屋上に向かい、ドアを開ける。
普段誰もいないはずの屋上に1人の女子の姿が見える。
「〜♪」
ドアを開けると同時に彼女の歌声が耳に入る。
透き通っていて、綺麗で、力強い。そんな歌声に夢中になっていると。
ドンッ!
「ひゃぁ!」
ドアが勢いよく締まり、彼女が素っ頓狂な声をあげる。
「綺麗だな」
彼女と目が合った僕はそんな言葉をこぼす。
「なにが?」
彼女は期待の眼差しをこちらに向けて、聞いてくる。
こういう奴は嫌いだ。誰にでもいい顔をして、仲良くしてる風を装っている。
こんな奴と喋っていてもいいことなんてない。
だから僕は言う。
「今から屋上で寝ようとしてるんだ。出てってくれ。」
そういうと彼女は笑顔のまま、表示を変えずに言ってくる。
「出てって欲しいなら、私の質問に答えてくれない?」
「早く内容を言ってくれ」
めんどくさいが、こういう時は聞いて適当に返す方が早く済む。
「私さ、最近色々なことが上手くいってないの。だから、新しいことをなにか始めようと思ってるんだけど、なにか案ある?」
「は?」
どんな質問だ。抽象的すぎて、中身が見えてこない。
「は?ってなによー。いいからさ、なんか言ってよー。言うまで私出ていかないよ?」
(めんどくせぇ!)
僕は心の中でそう思いながら。当たり障りのないことを言ってみる。
「日記とか付けていけばいいんじゃないか?」
「日記?」
「上手くいかないことがあるなら、日記を付けていって、振り返っていけばなにがダメなのかわかるようになるんじゃないか?」
そう言うと彼女は驚いた顔をして言う。
「それいいじゃん!君ってもしかして意外に頭いい?」
「質問には答えた。早く出てけ。」
そう言うと彼女は、ドアの方に歩き出し、
「佐藤桃花。私の名前だから覚えといてね?」
そう言って屋上を去っていった。
聞いたこともない名前。興味もない。
ただ、あの歌声だけは...
自分の心に染み渡って来る気がした。
(はぁ...一体俺は何を思っているんだ)
あいつら以外とは関わらない。そう心に決めたんだ。今更交友関係を作ろうとも思わない。
(さっきの事は忘れよう。)
そう思い、僕は少し屋上で休んだ後、学校を後にする。
「ただいまー」
お腹がすいたので飯にしようと思い冷蔵庫に手を伸ばす
・・・何も無い。
買い出しをすっかり忘れていた。
(今日はカップラーメンか...)
そうして夕食を食べ、シャワーを浴び、ベットに入る。
目を瞑ると、今日あったことが頭に流れてくる。
久しぶりにあの夢を見た...
もう顔も忘れてしまった母親の声をまた思い出してしまい、気分が悪くなる。
自分の父が亡くなってから。小さいアパートに住み、アルバイトをしながら学校に行く生活。
学費などは父方の祖母に助けて貰って何とかやっていっている。
父の私物は大切そうなものだけ持ってきたが、まだ触れないでいる。
こんな僕が触っていいものでは無いから。
僕は僕が嫌いだ。生きている意味なんてないと思ってしまう。
(考えれば考えるだけ、意味なんてない。)
そう思い僕は、眠りに着く...
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