第80話 アビスゾクメツスタイル継承者
「今、なんて言ったんだ? アビスゾクメツスタイルって聞こえた気がしたけど」
そこらへん、英語聞き取りが出来ない俺は相棒に、茉莉に頼るしかない。
俺の言葉に
『アビスゾクメツスタイル究極攻撃。膀胱破裂の闘志』
……意味を教えてくれた。
なるほど、そうか。
究極攻撃は奥義の訳で
闘志って、闘気の英語訳になりそうな言葉だね。
確定っぽいな。
……こういうバトルロイヤルって、まず1番強い奴を集団で倒すのがデフォという話を聞いたことがある。
これは顔を出してみるべきなのか……?
まあとりあえず。
興味はあるので。
俺は英語を発した女の声の下に向かった。
そこには……
岩と砂と、植木と池の。
日本風庭園があって。
そこに
「Your bladders burst. You can't get up until you get the surgery」
倒れ伏し、苦しんでいる複数の逞しい武芸者たちと。
その中にポツンと一人、彼らを見下ろし、両手を広げて立ち尽くす金髪の白人女性。
その女性は身体にピッタリしたウェアを着ていた。
色は黒。
何と言うか……
現代忍者。
一言で言うとそんな感じ。
そのままどっかの企業の機密情報の部屋に向かっていくスパイで通る。
この女性の姿を見て受けた印象はそんな感じだ。
そして女性としての印象は……
ものすごい美人だった。
妖精だ。
……どこかで見た記憶があるような。
そんなことを頭の片隅で考える。
そこに
『あなたたちの膀胱が破裂した。手術を受けるまでは起き上がれないよ』
茉莉の通訳。
……嫌な技だな。
マジで闘気で膀胱を破裂させる技なんか。
阿比須龍拳には無い技だな。
そんなことを思いつつ身構えていると
「Hey, another opponent has appeared. OK. I will fight」
……なんか言った。
でもおそらく、こっちを見てるからこっちに何か言ってるな。
『……また敵だ。分かった。戦うわ』
同時通訳。
助かる……
女は俺を睨み据えながら両手を高く掲げて
「Abyss Zokumetsu Style ultimate attack! Bladder rupture fighting spirit!」
シャウト。
同時に衝撃が来た。
俺の下半身、下腹部あたりに破滅的な感覚が。
俺は瞬間的に下半身の闘気の濃度を意識的に高めた。
すると、即収まった。
……ふう。
「Was the Bladder rupture fighting spirit ineffective? Understood. If so……」
女は俺を驚きの目で見つめていた。
多分、これまでの相手は地面で倒れている彼ら武芸者たちのように、この膀胱破裂闘気1発で勝負が決まったんだろうな。
「My name is Linfilt Nikdaruma! An inheritor of the Abyss Zokumetsu Style who lives as a martial artist!」
そして俺を見据えながら。
なんか両手を構えて、ポーズ決めて、何か言った。
とりあえず、リンフィルト・ニクダルマは聞き取れたが……。
『膀胱破裂の闘志が効かないなんて。ならば。私の名前はリンフィルト・ニクダルマ。アビスゾクメツスタイルを継承した武芸者です』
いやホント、助かる。
「ありがとう。茉莉」
俺は礼を言いつつ女を観察する。
女の構えた両手には指輪が嵌っていた。
それも10本の指、全部にだ。
そしてその指輪から細い糸状の何かが出ており……
もしかして、金属糸?
そんな武器、実在しているのか?
見たことのない武器。
もしそうなら。
知識が無いから対処法を立て難いぞ。
マズいな……
少し焦る俺。
そこに
「Abyss Zokumetsu Style ultimate attack. Puppeteer fighting spirit」
女の声と同時に。
糸がどういうことだろう……生き物のように動き出したんだ。
めっさ見難いけど……
『アビスゾクメツ以下略。人形遣いの闘志』
ありがとう。大体分かった。
なんとなく奥義名で想像はつく。
多分、闘気を流して本来は小手先の技で動かせないものを動かす奥義なんだろう。
そして女は
「Abyss Zokumetsu Style ultimate attack! Daruma fell down!」
両手を突き出しまた何か発言を。
なんとなく雰囲気で奥義なのは分かるけど……
そこに焦りが伴った茉莉の言葉が
『だるまさんが転んだ!』
……それはマズい!
アビスゾクメツスタイルにもあるのか!?
奥義・
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