第83話 追い込まれていく4人
「そんなもんで攻撃されたら一環の終わりだな」
若きジャスティーナの言葉にゴドウィンは手にした拳銃を見つめる。
まだ20代
「まあ、至近距離からいきなりズドンとやられたら避けるのはほぼ不可能だな。ただある程度の距離があれば絶対に避けられないほどではないぞ」
そう言うゴドウィンの言葉にジャスティーナは疑わしげに
「目に見えないほど速い弾をどうやって避けるんだよ」
「そりゃ発射してから避けるのは人間の反応速度ではとても無理だ。だが実際にこいつを使ってみると、動いている的に当てるのは相当難しいことが分かる。ほんの少し射線を動かすだけで弾の
その話にジャスティーナは感心したように
「なるほどな。ってことは銃を持った相手に
「ただ動くだけじゃ
そう言うとゴドウィンは
☆☆☆☆☆☆
(弾切れ! ここだ!)
オニユリの銃撃が止まった。
拳銃の弾には限りがある。
教会での戦いでジュードがオニユリから奪った拳銃には、6発の弾丸が
その情報通り、オニユリは左右の拳銃で合計12発撃ったところで射撃を中断し、新たな弾丸を拳銃に
その
「くたばれっ!」
2本同時の射撃だった。
矢はそれぞれオニユリの頭と足を
ジャスティーナの得意技だった。
オニユリの弾丸の
矢は吸い込まれるようにオニユリに向かっていく。
だが……そこで発砲音が響いた。
ジャスティーナの放った矢はオニユリに命中する前に空中でへし折られてしまう。
「チッ!」
ジャスティーナは舌打ちをすると前方に目をやる。
すると岩橋の向こう岸にいる白髪の男らのうち、拳銃を2丁構えている男が銃口をこちらに向けていた。
その男が放った
(……あの男も相当な腕前だ)
ジャスティーナは重苦しい気分になる。
目の前のオニユリを倒せたとしても奥にはあの男を
そして後方ではチェルシーを相手にプリシラがたった1人で戦っている。
状況はこちらが相当に不利だった。
それでもジャスティーナは気持ちを
(後方に
敵が全員で一斉に撃ってこないのは、後方でプリシラと戦うチェルシーに流れ弾が当たるのを恐れてのこと。
ジャスティーナの足元を
そうなるとジャスティーナを
(3人には悪いがこの状況を利用させてもらう)
ジャスティーナは引き続き
矢筒に残る矢の数は残り13本になった。
最後まで生きようと
ジャスティーナは小刻みに足を動かし、体を前後左右に揺らす。
(動け。的を
彼女の視線の先ではオニユリが拳銃に弾丸を
目にも止まらぬ速度で飛ぶ弾はジャスティーナが持つ
ひとすじの血が彼女のこめかみから流れ落ちて
次々と放たれる弾を防ぎ続けて、
そしてジャスティーナの
「ぐっ!」
思わず苦痛の声を
反撃の機会を逃さないために。
☆☆☆☆☆☆
聞き慣れない発砲音が響き渡る
彼を守るために
だが、発砲音に続いてすぐ近くでけたたましい金属音が響き、次いでジャスティーナがわずかに苦痛の声を
彼の目の前の地面に数滴の血が落ちている。
ハッとして上を見上げると、ジャスティーナのこめかみから流れる血が彼女の
さらにジャスティーナの
半身の姿勢により
(ジャスティーナ……痛いだろうな。苦しいだろうな)
彼女はいつも通りの勇ましい表情を
エミルは
苦痛を感じながらもなお戦意を失わないジャスティーナの気丈な心。
エミルを守るために自分の身を犠牲にすることも
チェルシーとの戦いにほんの少しの恐怖を覚えながらも必死に気持ちを
エミルは
皆が苦しい中で自分だけが何も出来ていない。
その事実がエミルを
自分を守るためにここまで連れて来てくれた皆の助けになることが出来ない。
(何で僕は……何で僕はこんなに弱いんだ)
そうしている間にも発砲音は続き、ジャスティーナの血が目の前に一滴また一滴と落ちてくる。
その血を見ているうちにエミルは腹の奥底で黒いものが
それは静かな水面にわずかに生じた奇妙な
(うぅ……この感じは)
エミルはひどく落ち着かない気分になり、ふいに思い出した。
夢の中にいつも現れる黒い髪の女のことを。
彼女は常にいくつもの強い感情を
怒り、恨み、悲しみ、喜び。
そうした様々な感情がエミルの胸に表れては消える。
エミルは戸惑った。
まるで自分の心が自分のものではないような違和感を覚える。
エミルはそれが恐ろしくなり、懸命にその違和感を抑え込もうとした。
しかし
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