第4話 NCCB(国家国民取締対策局)
__NCCB(国家国民取締対策局)本部__
東京都庁近くにある壮大な建物の最上部の3フロア全体がNCCB本部となっているが、誰一人国民でその場所を知る者はいない。
その建物を取り囲むように大きな公園が広がり、園内には数多くの木々が植えられ、それらが建物の中を周りから見る事を困難にし、さらには外部からの様々なものの侵入を防ぐようにしている。
屋上は緊急用大型ドローンヘリコプターが離着陸出来るようになっており、その大型ドローンヘリコプター1機の定員数は10名、緊急時には、ある程度の人数移動が瞬時に行えるようになっている。
常時、屋上にはそれらが最低でも5機は待機している状態だ。
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照明を暗くしたその室内の壁面には、日本地図と共に日本全体のインターネット情報網が大きく表示された電子パネルが掲げてあり、その変わりゆくパネルの光が部屋を怪しく照らしている・・・。
まるで日本中を沢山の蛍が行き来しているかのようなその光景が、NCCBを脅かそうとしている者達のいたずらな動きだとは誰も思わないだろう・・・。
幻想的かつ夢の中にいるような、ある意味心地よい映像にも見えるその怪しげな光を・・・。
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「おいトキタ、他からの情報はどうなっている?連絡はまだか?」
「はい。今、慎重に調べている所です。」
「とにかく急げ。「虫」どもの動きをくまなく監視するんだ。」
この「虫」とは国家に反旗を翻す、ごく一部の個人や、少数の反乱を試みている政府下で働く事の出来なかった人間達・・・。どこからともなく湧いてくる、という所からNCCBによって付けられた呼称である。
「虫」の存在はNCCBの知る所でも、全国のあらゆる場所で確認されている。「駆除」してもまた何処からともなくどんどんと現れる。それは単独侵入、時には複数同時侵入であったりもする。
とにかくNCCBにとっては厄介なものだ。
そしてこれら「虫」達は、どのようにNCCB通信網に潜り込んでくるのか分からないが、ごく僅かな通信網にあるネットワークの歪(ゆがみ)を見付けてはすり抜け、政府の中枢機関へと潜り込もうとしてくるのだ。
そもそも、強固に作られているNCCB組織のネットワークシステムに入り込む事でさえ難しいのに、「虫」達はそのいくつものネットワーク防御網を突破して、一番奥深くの中枢にある核の部分に入り込む事を試みているのだ。
そう、NCCBの通信プログラムを破壊する事により、国民に埋め込まれているマイクロチップの無効化、あるいはそれ以上の事を目的としているのは間違いのない事だ。
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「「虫」の存在を国民に知られると厄介な事になる。侵入が認められた場合は直ぐに排除しろ!」と、棚橋が言う。
棚橋__NCCB本部長__
NCCB入局依頼、数多くの実績を重ね、今ではこのNCCB全ての統括を任される所まで昇りつめた男。
__政府の中でも恐れられている中心的人物__
今のところ、「虫」の存在は、NCCB本部だけが知り得る情報であり、まだ世の中の人々にとっては噂レベルのものでしかない。
もちろん「虫」達も表立って活動を行えばすぐさま「粛清」されるから、かなり慎重に行動を秘密裏に行っている。
この「虫」と「NCCB」組織との戦いは、ここ数か月で一気に増加してきた。
対策本部の「ネットワーク監視部隊」は現在、数千人規模の人材と、数多くの「AI」システムを導入し、その「虫」対策に追われているが、その中の一部の「虫」達の持つ能力は、その遥か上をいっているという噂さえ聞くようになってきた。
__AIを凌ぐ能力__
これにより、政府は心中穏やかではいられない状況になってきたのだ。
「先月突破された防御網は2つ。最終防御壁まではあと3つだ!防御ネットワークの危険領域まで「虫」は差し迫ってきている。あともう少し突破されれば、NCCBネットワークプログラムを改ざんされる可能性がある・・・が、それで済めばまだいい・・・中核破壊となると、この統率された国家の存続にも関わるぞ!とにかく早めに全ての防御網をチェックしてあらゆる侵入手段を塞ぐんだ!」
そう叫ぶ棚橋にトキタが近寄り話しかける。
トキタは棚橋の絶対的信頼を得る部下であり、NCCB本部長補佐の男。
「この間の人民コード(23561954782311・・・・・)、の男は第二ゲートを突破し、本当に危ない所までNCCBネットワーク網に入り込んできていました。ギリギリの所で「排除」出来ましたが、今後この様な事態が増えるとなると、現状の防御体制ではいつまで持ち堪えられるか・・・。もっと早急に外部からの侵入が困難なセキュリティー体制を構築していかないと大変な事になるかと・・・」
不安そうな表情でトキタが話す。
「私達が考えている以上に「虫」達の学習能力向上スピードは上がっている。何とかしないと、万が一人間がAIを超えるなんて事があったら上層部への言い訳にもならない。早めに対策を練る必要がある。」と、棚橋がトキタに静かに答える。
「人間がAIを超えるなんて有り得ないかと・・・。しかしながら私も・・・もしかしたら・・・と、考える事が増えてきました・・・しかし、現実的にそんな事、有り得るのでしょうか?・・・想像もつかないのですが・・・。人間がAI以上の能力を持つなんて・・・。」
トキタは不安げな顔で棚橋を見ながら、さらに付け加え思いを吐露した。
「考えられるのは・・・下等能力だと思っていた人間の中で、わざと政府の適正テストを不正に行っていたとしたら・・・そして政府の元で働かず、政府転覆を狙って活動している者がかなりの数いるのだとしたら・・・。そう考えると有り得ない事ではないような・・・。」
「私も同じ事を考えていた。政府下で働く事は国民にとって給与、生活、どれをとっても安心を保証されたようなものだ。だからこそ、あえて適正テストで悪い結果を出そうとする者などいないと思っていた・・・・が・・・違うかもしれない。最初から、政府転覆を狙ってその能力を隠していたとしたら・・・・。確かに、今はそんな事が有り得ない、と思う事よりも、有り得るのだと思って対処する事の方が得策かもしれない。」と、溜息交じりに棚橋が言う。
AIの誕生により、全ての人間がAIを超える事は出来ないと思われてきたが、その「まさか」が目の前に差し迫ってきているのかもしれない・・・。
__AI以上の能力を持つ人間__
(そんな馬鹿な事があっていいのか・・・。いや、あってはならないのだ・・・。)
棚橋は心の中でそう呟いていた・・・。
一体、どんな奴らがそんな能力を持てるっていうのか・・・。
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