外面が全てとは限らない。

昔から、本が好きだった。

エッセイでも、ファンタジーでも、学園物でも。

いつか、自分で作ってみたいと、純粋な子供心で思ったことだってある。

しかし、あの出来事から、そんななまったるい気持ちで踏み入っていい世界じゃない。と滅亡したことを、鮮明に覚えている。

それなのにまだ、小説を書きたいと思っている自分に気持ち悪いと思ってしまう。

共作した友達との関係も嫌でしょうがない。

いつからこんなに曲がってしまったのだろうか。

こんな自分が、大嫌いだ。



宿題中、いきなり、メッセージを届いたことを伝える通知音が聞こえた。

目が覚めたように、目をこすってスマホを手に取る。

そこには、漢字で準とだけ記されていた。

実は、森に校門で話しかけられた日、こっそりLINEのコードの紙を渡されていた。こっそりだったのは、学校内だったからだろう。

ついでに有島さんのLINEも教えてもらっていた。

森からは、こんなメッセージが入っていた。


『俺さ、太田先輩と会ったことないんだけどさ』

『ちょっと意識してみたら、結構みんな噂してるんよな』

『ヤンキーだって』


―――‼

これには稲荷だって驚いた。

あの努力家みたいなやつが、本当に悪い奴か。

気づけば手が動いていた。


『みんなって?』


『クラスの女子とかも言ってるし、クラスの真面目な奴も肯定してる』


『マジか』


冷静に考えようと、いったんそのことは置いておいて、聞きたいことを打った。


『一つ質問いい?』

『有島さんと、太田先輩の接点ってある?』


『え、たぶんだけど、夏凜は小学校のころバスケ部だったんだよ』

『んで、多分そこで…』


『そこで…』のあとは濁してある。

言いたくなかったんだろう。

文字には表したくなかったんだろう。それが恋心か、と見つめる。


『そーなんだ』

『森、有島さんは、先輩がヤンキーって知ってる?』

『ただの噂かもしんないけど』


『知らないと思う。正直あいつ友達少ないから』


あの性格だと、話しかけられずになるのか。

稲荷とは真逆だが、ある意味似ている者同士なのかもしれない。そうだと少し嬉しく思えた。


『明日、放課後うちのクラス集合。有島さんにも伝えておいて』


『おけ』



次の日の放課後。

二人はすぐ来てくれた。今日も部活は休んだという。

相変わらず有島さんは緊張していた。

この前、有島さんは稲荷を怒らせてしまったのだと思ったらしい。


「あの時は、ごめん。日頃の殺意が発散しちゃったのかもしれない」

「―――そっか。良かったです、嫌われなくて……」


といって、泣き出してしまった。

頬を伝ってスカートに水滴が落ちていく。


「えっ、ご、ごめん」


しばらくし、夏凜は長い髪をゆらゆらなびかせ、次第に泣き止みにっこりと笑った。


「ほんとに、良かったです。天童さん、仲良くしようね!」


彼女が自ら為語を使ってくれたことにまず驚いた。


「にしても殺意って。マジで言葉気をつけろよ」


準の茶化しが入り、笑いが起きる。

だんだんと笑いが引いていくと、ふぅと夏凜が息をついた。

なにかを決意を決めたように。


「準君、天童さん。私、夏祭り前に先輩に告白します」

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