SNS黎明期

渡貫とゐち

掌編「危険が板挟み」



「男性が車道側を歩くべきですけど!! そんなことも知らないんですか!?」

「あ、すみません……じゃあ、こちらへどうぞ」

「まったく、これだから最近の男性――ばう!?」


「あっ、すみませーん、花瓶を落っことしちゃいましたーっ、怪我ないですかー?」


 花瓶が脳天に直撃し、倒れてしまった女性へ……隣にいた男性が声をかけた。


「一応、理由はあったんですけどね……車道側よりも建物側が危険だと思ったのですけど……建物側がいいと言ったのはそちらですよ?」


 痛みのせいか、立ち上がれない女性は、なにも言えずにうずくまってしまった。

 そこで、男性が彼女に手を差し伸べる。


「まあ、どちらにせよ危険ですけどね……どうします? どっちの危険を選びますか?」


 車道側か、建物側か。


 横に並んで歩く必要もないのだから、道のど真ん中を、縦に並んで歩くことも一考の余地ありだ。



 …了

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