推しの双子の兄になったんだけど、破滅する悪役令嬢だからその役割を引き受けてハッピーエンドを目指します!

かがみゆえ

プロローグ

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 それは、起こるべくして起こった最期。


「あぁ、とっても綺麗……」


 うっとりと空を見上げ呟くのは、声が高めなことからおそらく女性だろうか。

 姿は黒いマントを羽織っていて、誰かは分からない。


「………ど、して……おま、えが……」


 うつぶせに倒れ込んでいる人物が身体を震わせながら顔を上げ、黒いマントの人物へ尋ねる。

 黒いマントの人物が誰かなのか分かっているような口振りだった。


「どうして?」


 黒いマントの人物が首を傾げる。


「それを君が聞くの?」


 黒いマントの人物の声色は変わらない。

 楽しそうでも、怒っているようでもなく淡々としていた。


「……ゲ、スが……」


「嬉しい、褒め言葉だよ」


 暴言を吐かれたのに、黒いマントの人物は嬉しそうに肩を上下させた。


 黒いマントの人物の目の前には、息絶えた人間が山となって積み上げられていた。

 暴言を吐いた人物は生きた最後の一人だった。


「さようなら、これでようやく―――…」


 そう言って、その最後の人物へトドメを刺す。

 黒いマントの人物の頬には透明な液体が流れていた。


「……味方は誰もいない。自分以外は敵……。いつも独りぼっち……。生きるためにはこうする道しかなかった……。でも、これが“必然”だったなんて言わせない……」


 頬に流れる透明な液体は美しいのに、その液体を流す2つの瞳からは生気を感じられなかった。


「大丈夫、大丈夫。あとは任せてね」


 空を見上げながら宣言する。

 瞳に生気はなくても、口許は弧を描くことが出来ていた。





 これは、とある物語ストーリーの終わりだ。

 だが、終わりの始まりである。


 ある願いのために足掻いて、足掻き続けた人物がいたということをどうか忘れないでほしい。


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