第二章⑨
三十分後、よれよれになった朝比奈さんが戻ってきた。うわぁ、本物のウサギみたいに目が赤いやあ、なんて言ってる場合じゃないな。
俺が今日の晩飯は何だろうなとかどうでもいいようなことを考え出した
「腹立つーっ! なんなの、あのバカ教師ども、
バニー姿で
「何か問題でもあったのか」
「問題外よ! まだ半分しかビラまいてないのに教師が走ってきて、やめろとか言うのよ! 何様よ!」
お前がな。バニーガールが二人して学校の門でチラシ配ってたら教師じゃなくとも飛んでくるってーの。
「みくるちゃんはワンワン泣き出すし、あたしは生活指導室に連行されるし、ハンドボールバカの岡部も来るし」
生活指導担当の教師も岡部担任もさぞかし目が泳いでいたことだろう。
「とにかく腹が立つ! 今日はこれで終わり、
やおらウサミミをむしり取ったハルヒはそれを床に
「いつまで泣いてんの! ほら、ちゃっちゃと立って着替える!」
まともな
少しは男の、少なくとも俺の目くらいは気にかけて欲しいものだ。
やがて部室から出てきた朝比奈さんは
「キョンくん……」
深海に
「……わたしがお
何と言うべきか。て言うか、あなたも俺をその名で呼ぶのですか。
朝比奈さんは油の切れたロボットの動きで俺にブレザーを返した。胸に飛び込んで泣いてくれたりするのかなと
ちょっと残念。
次の日、朝比奈さんは学校を休んだ。
すでに校内に
問題は涼宮ハルヒのオプションとして朝比奈みくるという名前が
「キョンよぉ……いよいよもって、お前は涼宮と
休み時間、谷口が
「涼宮にまさか仲間が出来るとはな……。やっぱ世間は広いや」
うるさいな。
「ほんと、昨日はビックリしたよ。帰り
こちらは国木田。見覚えのある
「このSOS団って何なの? 何するとこ、それ」
ハルヒに訊いてくれ。俺は知らん。知りたくもない。仮に知ってたとしても言いたくない。
「不思議なことを教えろって書いてあるけど、具体的に何を指すの? そんで
朝倉涼子までがやって来た。
「
俺も休めばよかった。
ハルヒはまだ怒っていた。ビラ配りを
空っぽのメールボックスを
「なんで一つも来ないのよ!」
「まあ昨日の今日だし。人に話すのもためらうほどのすげえ
俺は気休めを言ってやる。本当はだな、
何か不思議な謎ありませんか。はい、あります。おお素晴らしい、私に教えてください。
なんてことになるわけないだろう。いいか、ハルヒ。そんなもんはマンガか小説の物語の中にしかないんだ。現実はもっとシビアでシリアスなんだよ。県立高校の一角で世界が終わってしまうような
……と、もっともらしく説いてやりたいのだが多分五行くらい話したあたりで
「みくるちゃんは今日休み?」
「もう二度と来ないかもな。
「せっかく新しい衣装を用意したのに」
「自分で着ろよ」
「もちろんあたしも着るわよ。でも、みくるちゃんがいないとつまんない」
長門有希は例によって
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