第3話
「へぇ、じゃありません!大変なんですよ!」
いつもは物静かなリゼが私の肩をガッと掴み揺すってくる。
「何故お嬢様はそんなに呑気にされているのですか?!」
「んー、自業自得じゃない?私も婚約破棄されるかなって思ってたし。あ、けどこの贅沢な暮らしから離れちゃうのはちょっと嫌かも。」
「ですが!」
「ん?」
「・・・なんでもありません。」
急に切羽詰った顔をしたと思ったら少し悲しそうな顔をして私の肩を揺するのをやめた。完全に否定しなかったのは私の行いを思い出したからだろう。あれは仕方ない。誰も擁護はできない。
「あくまでも噂なんでしょ?なら直接言われるまでは大丈夫よ。」
「直接言われたらどうするおつもりですか?」
「え、まあその時に考えるよ。この婚約だってそもそも意味不明だったしね。」
私の婚約相手のガロン・モンタギューはグロッサ王国の第2王子であり、この国の最高警備部隊である王国騎士団の団長なのである。私はグロッサ王国の隅の方に領地を持っている公爵の娘である。公爵という響きは聞こえはいいが実際はほとんど畑として農家を営んでいるのである。どう考えても繋がりようのない私達が繋がったのは突然だった。
あれは13歳の頃。ランチを終えお父様とリゼと一緒に庭で遊んでいた時のことだった。突然白い馬車が家の前で停り、明らかに偉そうな人が馬車から降りてきた。当時はよく分かっていなかったがあれは王族専用の馬車だったらしい。お父様は急いで馬車に近付くと1枚の紙を貰って腰を抜かしていた。そして偉そうな人が私に近付いてきて
「ガロン様から伝言です。『婚約しろ。』と仰っておりました。」
そう一言私に告げると急いでお城の方へ帰ってしまった。
当時13歳(中身18歳)の私からしたら何でそんな上から目線で言われなきゃいけないの?くらいに思っていたのだがお父様はたどたどしく私の所に来て深い深呼吸をした。
「いいかエリーゼ、お前はこの国の第2王子に婚約を申し込まれたんだ!凄いことだぞ!何故だか分からないけどな!」
お父様は私を抱き抱えて自分の事のように喜んでいた。いやいや、何故だか分からないなら喜ばないでよ!と突っ込みたかったが世間は階級が全て。普段は温厚で優しいお父様の人間味溢れる所を見た、とポジティブに捉えることにした。
「エリーゼ、王子と結婚するとな…!」
お父様はいかに王族が素晴らしいかを熱弁してきた。日本でよく見た通販番組の如く熱弁してきた。朝は高級なフルーツ、お昼はチーズたっぷりのお洒落なスパゲティ、夜は豪華なディナー、欲しい物は全て手に入る…などなど。特別魅力を感じることは無かったがお金があって苦労する事はないだろうと軽い気持ちで婚約を決めた。
私の人生は後悔の連続。この時も軽い気持ちで決めていなければこんなことには…。
「こんなことには、ならなかったのになぁ…はぁ…。」
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