隠された部屋

霧谷村の深い霧の中、中島家には誰もが知らない秘密が隠されていた。

家の奥深く、普段は誰の目にも触れることのない部屋が存在している。

この部屋の存在は、中島敏郎と順子だけが知る秘密だった。

ある日、娘の雪子が偶然にもその部屋に気づき扉に手をかけた時、敏郎は慌てて彼女を止めた。

「雪子、そこには入らないでくれ。大事な物を保管してあるんだ。」彼の声には珍しいほどの真剣さがこもっていた。

雪子は父の言葉を素直に聞き入れ、その部屋には二度と近づこうとしなかった。

しかし、その禁じられた部屋に対する好奇心は、雪子の心の奥底に静かに残り続けた。

部屋の扉から漏れる微かな光や、時折聞こえるかのような小さな音。

これらすべてが雪子の想像力をかき立て、彼女を不思議な夢へと誘った。

隠された部屋は、家族の中でも特に敏郎が厳重に守る場所であり、彼は頻繁にその部屋に入り、何時間も中で過ごしていた。順子もまた、その部屋の存在を認識しながらも、決してその中身について語ろうとはしなかった。

雪子の15歳の誕生日が近づく頃、佐々木医師と道端で話をしているとき、佐々木医師が雪子に向かってぽつりと言った。

「雪子ちゃん、この世には、大切な人を守るために隠されていることがたくさんあるのよ。」

佐々木医師の言葉は謎めいていたが、雪子にはなぜか心に響いた。

その夜、雪子は夢の中でその禁じられた部屋を訪れる。

部屋の中には美しい光が満ち、そして何かが彼女を突き刺すような哀しい感覚があった。

目覚めた時、雪子はその夢の意味を理解しようとしたが、その答えはいつも手の届かないところにあるように感じられた。

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