自立 〜 2021年夏 〜
自立した個人による西欧型市民社会への憧れから始まった日本の近代。当時の知的エリートには自らの内面に潜む前近代性に悩む者もいた。
昭和20年(1945年)8月、日露戦争に「勝たせてもらった」反省もなく同調圧力の連鎖に巻き込まれた末に、多大なる犠牲を払って自立できた。
令和3年(2021年)8月、冷戦末期の1980年代に「経済発展させてもらった」真の要因を分析することもなく、政治・経済・文化のあらゆる面で「敗戦」を目の当たりにしている。そのフィナーレとしてのオリンピックであった。
76年前には「敗戦を敗戦として認める」ことにより新しい社会への再出発を期する理性の持ち主も少なからず存在したが、軍部の抵抗により「終戦」と言い換えることで決着したそうだ。
「終戦派の亡霊」が、時を経て社会の隅々で復活し、藤田省三の考察通り高度に発達した日本型ファシズム社会を完成したのではないか。非常事態宣言を熟慮の末無視する「自立した個人」または「自立せざるを得ない個人」が増えたとの調査に少しばかりの希望が見えたような気がする。
2021.8.15
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