第46話 一旦休憩に

ピピピッ…ピピピッ


「もう時間か」


鷲は設定していたタイマーを止める。

時間はちょうど3時前だ。

鷲は4人の為に用意した問題を印刷をする。

印刷が完了するまで時間があるので一旦みんなの様子を見に行く。


「なんだこの状況は・・・・・・?」


部屋の中に入ると意気消沈してる3人。


「ちょっと、ここさっき教えたはずよね?」

「す、すみません!」

「笑止!やり直し!」

「はいーーー!!」


そして明美さんに絞られてる時と同じように麗音に絞られてる雅。

明美さんとは蓮と雅の母親のことだ。


「お疲れ様です、お兄様」


俺が入って来たことに気づいた灯里が声をかけて来た。


「あ、ああ・・・その前に何があった?」

「最初は上手くいっていたのです。最初は」

「最初は・・・」

「はい。しかし予想以上に基礎の部分が出来ていなかったので中学の内容から入ろうと切り詰めていった結果がこれです」

「なるほど・・・」

「ですが、その甲斐もあり基礎固めは出来ました♪」


なるほど、つまりこの屍3つは想定、予想を超える量とスピードで脳がパンクしたのか。

このまま続けようと思っていたが流石に無理か・・・


「仕方ない。俺の授業は晩飯後に回すことにする。それまでは休憩とする」


俺がそう言うと3人はまるで救世主を見るかのように目をキラキラさせてこっちを見る。


「いいのですか?」

「どっちみち、このままやっても効率が悪いからな。一度リフレッシュした方がまだましだろう。そういうことだから、麗音、一時休憩だ」

「仕方ありません」

「「「「よっしゃーーー!!!」」」」


さっきまでの死に様はなんだったのか4人は元気を取り戻した。


「片付けを終えたら下に降りてこい、ジュースとおやつを用意しとく」


鷲は一足先に一階に降りて行く。



***


鷲は家に常備してある菓子を手当たり次第出していく。

種類は洋菓子、和菓子、塩味のある物など様々。

そうしている内に最初の一組が入って来た。


「いやっほーー!」

「先に終わったのはやっぱりお前らか」


入って来たのは雅と麗音だった。

あのペアの中で唯一の使用人ペア、片付けは他のペアと比べてスピードはダントツだ。


「お手伝いいたします」


麗音が流れるように俺の隣に来て手伝いを申し出る。


「いや、もうすぐ終わるから。強いていうならそこでリラックスして体力と精神力の回復に努めてくれ」


そこまで手間でもないし、断っておく。


「ではお言葉に甘えて!」


雅は鷲の言葉を聞いて、テレビの前にあるソファーにダイブして思いっきしくつろぐ。


「あの娘は…使用人としての自覚があるのですか……」


あまりにも遠慮のない様子に麗音が小言をこぼす。


「仕える家が違うのにどうしてそんなに苦言を漏らすんだ?まるで母親みたいだぞ?」


少し揶揄ってみたが、麗音は凛とした返しをした。


「違います。あくまで同じ使用人としてです」


麗音はあくまで同じ立場の人間としての評価だと言っているが、俺はその言葉を聞いてよりテンションを上げる。


「あはは、その言いぐさ、本当に明美さんを見ているみたいだよ」

「明美さん…?」


明美と言う人物の名前に麗音は頭を傾げる。


「ああ、そういえばお前は明美さんと会ったことはなかったな。明美さんって言うのは蓮と雅の母親だ」

「蓮君と…雅の……」

「お前と蓮を見ていると本当に慶祐さんと明美さんを見ているみたいだ」

「そ、それって……///」


鷲の言葉に頬を赤らめる麗音。


「その様子、満更でもないんだな」

「つ、違います!」


麗音は強く否定する。


「そうか。じゃあこれは俺の独り言として聞き逃してくれ」


それからちょうど片付けを終えたみんなが降りてきた。

その中で蓮は麗音が気になったのか彼女に尋ねる。


「どうしたのですか麗音、顔が赤いですよ?」

「……///な、なんでもありません!!」

「ちょっ……なんで怒ってるんですか…?」


二人のそのやり取りを見て鷲と雅は顔を合わせて笑い合う。

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