第42話 焼肉会議
「こうして直接会うのはどんぐらいぶりだ?」
「かなり前でしょ。最低でも2年は経ってるわよ」
「正確には2年と半年ほどですね」
「相変わらず細かいわね蓮は」
今俺は蓮と共に個室のある焼肉屋に来ていた。
中に入ると既に一人のJKがいた。
身長は160cm前半で制服を着崩して胡坐いをかいて既に肉を焼いている翡翠がいた。
「二人ともそんなところで立ってないで早く座りなさいよ」
鷲と蓮は翡翠の対面に座る。
「ほらほら、とりあえず二人とも肉頼みなさいよ」
「そうは言いますけど今回全部鷲様のおごりですよね?」
「そうだけど?」
蓮が嫌味なつもりで言った言葉に翡翠は、何当たり前のこと言ってるのよ?、と言う。
それに蓮は溜め息を吐く。
「では、なんであなたがそう肉を勧めるのですか!」
「だって、鷲様の奢りよ?いいもの食べなくちゃ損でしょ!」
蓮は仁義というか主従関係に重きを置くタイプだし、逆に翡翠は雅と同類で、と言うより雅より俺を近い存在と分類している。
だからこそ二人のこういう口喧嘩は毎度のことだ。
鷲は二人の間に入る。
「まあまあ、落ち着け。今回の奢りも俺が自分から言い出したことだ。蓮もそう怒るなって。ただ翡翠もできるなら手加減してほしいけどな」
「ですが、先日も奢ってもらったばかりですし」
蓮は先日兄妹で奢ってもらったことを気にしている模様だ。
そんな蓮に鷲は言う。
「それはそれ。これはこれだ。それに金ってのは使ってなんぼだ。嫌な言い方になるが実際に俺は金を持ってる。だからこそ使わなくちゃいけないとも考えてる。もちろん多少の節制はするがし過ぎるのも精神的に悪い。それにある意味義務みたいなものだしな」
「ほらほら、鷲様もこう言ってるしどんどん食べましょう!」
鷲の言葉にとことん甘えて肉を更に焼きまくる翡翠。
到底歳上とは思えないのは黙っておこう。
そんな翡翠を見てまた溜め息をつく蓮。
「まったく、雅もあなたもどうしてこうも鷲様に遠慮がないのか……」
「そう言うなって。とりあえず食おうぜ」
鷲はとりあえず、追加で肉とドリンクバーを注文する。
それから三人は互いの近況報告や学校生活など他愛ない話で盛り上がった。
***
「さて、それじゃあそろそろ本題といこうか」
肉と米で腹を満たし、互いの近況を聞き盛り上がった。
そんな和気藹々としていた雰囲気から一変。
鷲のその一言で蓮も翡翠、二人ともが頭を切り替えた。
「正直、このまま談笑でも悪くわないが今回に限っては時間がないんだろ?」
「まぁね」
「そもそも、鷲様に力を借りる時点でかなり反則スレスレですけどね」
蓮の言う通り俺の力を借りると言うことは反則ギリギリ、いや卑怯と思われても仕方ない。
次期当主である俺が協力していると知られればそれを可決せざるを得ないと他の奴ら考えるのは自然なことだ。
「もちろんそんなことアタシだって思ったわよ。でもやっぱりやるからには出来るだけのことはしたいじゃない?ならアタシの持てる全てを使ってやる。そう決めたんだもの」
なるほどな。
高2の翡翠を候補にあげた判断は正しかったみたいだな。
なら、俺はそれに応えるまでか。
「分かって。改めてお前に協力しよう」
「ありがと、鷲様」
「やれやれ、根回しや隠蔽など誰がすると思っているのですかあなた達は」
「「それは任せる」」
「お二人とも!」」
俺と翡翠は蓮にグッチョブを送る。
「とは言ったものの、俺にできるのはアドバイスぐらいだ。直接的に力を貸してやることできない。それは了承してくれ」
「アタシだって、そこまで頼る気はないわよ!」
「ならいい。それじゃあ、結論から言うと勝つのは難しいだろう」
俺がそう言うと翡翠は少し溜め息を吐き、ガッカリした様子を見せるが彼女にとってもある程度予想していたことだろう。
「私もあなたから送られた資料を目を通しましたが、学生にしては良い出来だと思います」
「ほんと!?」
「おっと、あくまで学生としてです。相手は大学卒業済みかつうちで数年働いてるのです。これより良いものを出してくるのは確実です」
「だから考えた。お前に何を教えればいいのかをな。で、蓮と話し合って決めたのが、お前にビジネスの基礎について教える」
「ビジネスの基礎?」
翡翠は頭を傾げる。
「質の良い資料の特徴、見る人間がどんなところを見ているか、人の心、自身の流れを作る技術、その他諸々を教える。主に蓮がな」
「え?」
いつの間にか眼鏡を掛けPCとタブレットの抱える蓮。
「それじゃあ、俺はそろそろ帰るわ。カードは蓮に預けてるから存分にやってくれよ」
「え、ちょっと待って!」
鷲が気持ちのいい顔で個室から出て行った。
そして鷲を呼び止めようとする翡翠。
しかしそれを蓮が許してくれるはずもなく。
「どこに行くのですか?」
「ウェッ!?」
蓮は無理矢理翡翠を座り直す。
「さあ、頼ってきたのは貴方なのです。お望み通りたっぷり教鞭をとってあげます」
その言葉に翡翠は冷汗を流し顔を引きつらせる。
それから二人は翌日の昼を焼肉で済ませ解散した。
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