第32話 球技祭③

試合を終えた拓海と蓮が俺たちのところに来る。


「お疲れ」

「お疲れさま二人とも!」

「拓海君も蓮君もお疲れさま」


俺、日和、実夢は二人に労いの言葉をかける。


「ありがとう。練習通り動けてよかったよ」

「はい。練習の成果がでましたね」

「あれ?お前ら練習なんてしてたのか?」

「ああ、鷲を驚かそうと思って昼休みとか体育館借りて練習してたんだよ」

「うちのクラスはみんなやる気があり、拓海様が声をかけたら皆様快く参加してくださいました」


この二人いつの間にそんなことを……って流石主人公ってわけか、一声かければみんなが快く参加してくれるって、俺の説得は何だったんだか……


「なるほどな。それは強い訳だ」

「偶々バスケ部もいたし運が良かったよ」

「はい。流石バスケ部、動きの切れが段違いでいしたね」


そうは言うがお前らの方がよっぽど動きの切れと体力が良かったぞ。


「それで二人はどうする?俺らはこのまま鳩目の試合を見るが」

「もちろん見るぜ。動画で見るのと実際に見るのじゃ違うからな」

「私も同意します」

「それなら私も見学させていただきます」


蓮に続くように蓮の隣にいた麗音が答えた。


「麗音、いつの間にそんなところに」

「あら、私が隣にいては何か不都合なことがあるのかしら蓮君?」

「いや、そんなことは」


麗音に詰め寄られた蓮はたじろう。


「相変わらずの夫婦漫才だな」

「「夫婦漫才などではありません!」」


ちょっとボケただけでガチ目に怒られてしまった。


「鷲君、おふざけはそこまでにしたら?二人とも私たちの従者なのだから」


実夢の言いたいことは分かる。

ライバル企業の子息令嬢の従者なのだからあんまり疑われることは言うなってことだろうな。

と、そんなことをしているうちに鳩目の試合が始まる。

試合が始まって速攻で鳩目のチームの一人が相手チームを抜いていきレイアップで点を決めた。

そこからは割と一方的な試合だった。

相手のボールをカットしたらすぐにパスをして受け取った奴はそのままそのままシュート、鳩目に至ってはほぼすべてのシュートをスリーで決めていた。


「全体的にレベルが高いな」


これは俺の素直な感想だ。

流石ほぼ全員がバスケ経験者であるだけあるし、鳩目の機転の良さやバスケセンスは流石全国2位と言えた。


「鷲、いけるか?」


拓海が少し心配そうに聞いてきたが俺は自信満々に答える。


「難しいな」


その言葉に拓海おろか日和、麗音も驚く。

まあ、俺がこういう弱気なことを言うのは珍しいからな。

だが実際に難しい。

この目で見てわかったが、通常あのチームに勝つにはそれ相応なメンバーが必要だ。

それこそ、俺、蓮、拓海、それと獅子堂あたりのメンバーをそろえてようやくって

ところだろうな。


「ですがそれでも勝利を手にする。それが我が主です。そうでしょう?」


蓮が当たり前かのように聞いてくる。


「ああ、もちろんさ。別に難しいとは言ったが勝てないとは言ってないからな。俺は先に教室に戻ってる。お前らは各々自分の試合に集中してろ」


俺はそれだけ言って一足先に教室に戻る。

教室に戻ると加賀美、佐久間、木下、勇4人だけがいた。


「お、ようやく戻って来たか」


勇が立ち上がり俺を4人の輪に入れる。


「それでどうだった、鳩目のチームの実力は?」

「とりあえず飯を食いながらやろうぜ」

「俺たちは既に食べ終えてるから」


加賀美が俺のバックから弁当を取り出して俺の前に置く。

俺は弁当を開けながら勇の質問に答える。


「予想通り…いや予想以上に強い。だが勝てる見込みはある」


俺がそう言うと4人は笑う。


「やっぱうちのリーダーは格が違うな!」


加賀美が俺の背中を叩いてくる。


「正直向こうのメンバーを聞いて時、無理だと思ってたからね」

「でも、皇がいろいろとしてくれたからどうにかなるんじゃないんかって思うんだよ」

「さすがは大企業の御曹司だな」


4人が俺を見てくる。


「そこまで言うなら期待させてもらうぜ。だが俺たちの最終的な目的は優勝だ。とっと面倒事済ませるぞ」


俺は弁当をさっさと食って鳩目との勝負に向けて消化する。

そしてとうとう始まる。

新学期そうそうに始まった大注目の勝負が。





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