第11話 作戦の結果は・・・・・・

「その調子だ!」

「う、うん」


私は今、拓海君に泳ぎ方を教えてもらってる。


「一回休憩にするか」

「は、はい」


私は拓海君に引っ張ってもらい海から上がった。

そしてそのまま荷物を置いた場所に戻ってきた。


「うん。いい感じだ。次は海に顔を付けて練習しようか」

「は、はい」

「う~~ん、でもこのままじゃ遊ばずに終わっちまうな」

「あ、それなら」


実夢は自分のバックの中からある物を取り出す。


「それは?」

「これ、浮き輪。麗音が持たせてくれて」

「麗音が」

「う、うん……」


実夢はとっさに麗音の名前を出したが拓海から麗音の名前を聞いて彼女の内に謎のモヤモヤが現れる。


「どうしたんだ?」

「え?な、なんでもないよ!」


拓海は実夢の顔が少し暗くなったと思い声をかけると実夢は咄嗟に否定して絞れた浮き輪をこれこれと回す。


「もしかして、浮き輪のふくらまし方わからないのか?」

「うっ!は、はい」

「ちょっと貸して」


拓海を実夢から浮き輪を受け取り慣れた手つきで浮き輪を膨らます。


「はい」

「あ、ありがとう」


実夢は拓海から浮き輪を受け取る。


「俺、ちょっと飯買ってくる」

「いってらっしゃい」


拓海は実夢を置いて向こうの海の家へと走っていった。


なんだか新婚さんみたい♪


実夢はさっきのやりとりになんだか喜びを感じる。

そして実夢は手に持つ浮き輪を見る。


でもこのままじゃ拓海君に迷惑かけちゃうしもっと楽しい日にしないと。


実夢は浮き輪を持って海に入る。

浮き輪の穴から体をだし両手でしっかりと浮き輪の手を握るところを握る。


「ふーーー、はぁーー!」


実夢は思いっきり息を吸って腕だけ残して全身を顔まで海につける。


「ぷはぁーー!ふう、もう一度。ふーーーはぁーーー!」


実夢は何度も繰り返し顔を海につける練習をする。

それを周りから見ていた社員のみんなも危険だと分かっていてもその健気な姿に声をかけることが出来なかった。


「ぷはぁーー。はぁはぁ、最後に!あっ・・・」


実夢が潜ろうとした瞬間、腕の力が抜け浮き輪の握るところから手を離してしまった。


「あばぁ、あばぁばぁぱ・・・・・・!?」


実夢は必死に浮き輪を掴もうとするが元から泳げないことに加え先程までの練習で腕も脚も疲れ動かなくなってしまったのだ。

実夢はそのまま沈んで行く。


いや、私このまま死んじゃうの・・・いや・・・苦しいよ・・・・・・お願い・・・・・・


実夢は沈んでいく中うっすらとぼやける視界に映る何かに手を伸ばし祈る。


・・・助けて



***


俺は沈んで行く実夢が力なく伸ばす手を掴む。

そのまま手を引っ張り実夢の脇の間に腕を通してガッチリと掴み上がって行く。


まずい、すでに気を失っているし口から出てくる気泡も少ない。


俺は急いで足をバタつかせ水面に向かう。


「ぷはっ!」


俺は水面に上がり急いで実夢を浜辺に連れて行く。


「鷲様こちらです!」


麗音の呼ぶほうを確認してその場に急いで向かう。


「鷲様こちらにお願いします!」

「分かった。麗音、実夢の体が冷たい。タオルを持って来てくれ!」


蓮が連れてきた如月の社員の一人がそう言う。

俺は彼の横に実夢を連れて行く。

彼はまず実夢の口にあった海水を出す。


「まずは気道を確保しなくてはいけないのですが・・・」

「どうした!?」


彼の言葉の歯切れが悪い。


「その、人口呼吸をしなくてはならないのですが」

「っ!?」


そうか、実夢は如月財閥の娘、応急処置とはいえ口付けは戸惑われるか!

周りには俺と蓮と医療知識のある彼のみ。


「実夢先に謝っとく。すまん」


俺は実夢に人口呼吸を施す。


「ふーー、はーー、ふーー」


俺は人口呼吸を繰り返す。


「ぷはっ!」


実夢は息を吹き返し、体内に入った水を吐き出す。


よし、これで平気なはずだ!


「あとは任せても」

「御安心を」

「助かる」

「蓮、付いて来い!麗音はタオルを他に預けてこっちに来てくれ!」

「「はい」」


麗音はタオルを近くにいた如月の女性社員に渡して俺の元に来て俺たちはさっきまでいた建物の裏に戻る。



***(実夢視点)


「ぷはっ!」


なんだろう。

さっきまで胸がとっても苦しかったのに急に楽に


「#/&€¥〒*#¥€☆」


誰だろう、う、頭がなんだか


「大丈夫ですか?分かりますか?」

「う、は、はい」

「よかった」


誰だろうこの人


「あなたは・・・」

「私は医学生です。あなたは先程溺れていたところを引き上げられたのです。覚えてますか?」

「は、はい」


そうだ。私、顔を付ける練習をしててうっかり浮き輪から手を離しちゃってそのまま・・・・・・


「とりあえず診療所に行きましょう」

「はい」


私は医学生の方とそのお連れの女性の方にタオルを巻かれて診療所の方に。


「命に別状はありません。でも一度病院に行きましょう。近くに総合病院があります。予約しておきます」

「すみません」


診療所の方にそう言われてしまった。


「実夢!」

「拓海君・・・・・・」


多分拓海君は周りの人から私のことを聞いて・・・・・・

私は彼を見た瞬間、涙が出てしまった。


「ごめん・・・ごめんなさい。私が無理したから・・・」


私が無理して一人で海に行ったから拓海君に心配を


「そんなことより実夢が無事ならそれで十分だよ」

「拓海君……でも私のせいでせっかくの海が」

「それならまた来ればいい。今度は実夢が泳げるようになってからな」


拓海は笑顔でそう言った。

その笑顔はまさに主人公そのもの。


「拓海君……うん。また来ようね」


実夢は精一杯の笑顔で答える。


「ああ!」


二人はそのまま着替え近くの総合病院に行き診察をしてもらい実夢は健康そのものだと言われ家に帰って行った。



***


「はい…はい…ご安心を……もちろんお嬢様のためですから」


麗音はスマホで誰かと話している。

ところどころ聞こえる単語から相手は実夢なのはわかる。

すでに日は沈みかけ太陽の半身は海の下に消え海はオレンジ色に染まる。


「鷲様」

「実夢はなんて?」

「海で溺れてしまったこと、特にこれといった外傷や命に別状はないと。それとこのことは旦那様たちに黙って欲しいと」

「そうか。安心しろ皇の奴らには黙らせる」

「ありがとうございます。こちらも既に対策済みです」

「そうか・・・・・・」


俺はじっっと、日没の海を眺める。


「俺の見通しが悪かった」

「「え?」」


その言葉が自然と漏れた。


「万全の準備をしたつもりだった。人的被害、環境的被害にも備えた。その為に人員も集めこの一帯の店や人も説得した。だが結局は酷い有様だ」


命に別状は無かったとはいえ、実夢の性格や能力。

拓海の行動力・・・肝心の当人たちのことを含めていなかった。


「大失敗だな・・・・・・」

「それは違います!」

「蓮・・・・・・」


俺の隣にいた蓮が強く否定する。


「鷲様、御自身を責めないでください。貴方様は本当に実夢様のことを思って最大限の努力をされました。それを御自身で否定しないで下さい」

「そうです!」


蓮と共に麗音も立ち上がった。


「元はと言えば私が鷲様に実夢様のことを教えてあげれなかったこと。そして当日現場にいるとぬかり実夢様に海での注意をしていなかったこと。原因があると言うなら私です」


麗音も自身が不甲斐ないと言い俺を慰めようとしてくれる。


「なら今回の失敗を糧にしましょう。そして次に活かしましょう」


蓮が急に先生のようなことを言い出した。

しかし学校の先生のように何もない言葉では無く心に響く気持ちことばだった。


「そうだな。今日を糧に次を目指そうか」

「私も今度こそはお嬢様の為に最大限の努力を超えてみせます!」

「私も全力で鷲様をお手伝いさせてもらいます」


ほんと、二人の言葉心強い。


「ありがとう。なら今日はこの夕日を心に刻もう。次に後悔しないように」

「「はい」」


そして俺たちも太陽と共に海から帰る。



第一回ラブラブカップリング作戦

結果  大失敗

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