52.クラスside2
【ロイゼン王国】領内で起きた出来事から一日後。
神託官によって行われてきたことはヘレボルスを通じて瞬く間に世界に知れ渡ることになった。
また世界各国からは神託官と関わりのあった兵士等は処すべきなのではないかという意見が殺到したが【ロイゼン王国】国王であるアーレンはそれら全ての意見を無視し新体制を迎える王国に残留させると発表した。
ちなみにハルト達と別れたあとの結華達はアーレン国王のご厚意で王城に泊めてもらっていた。
城で泊まり次の日になると急遽王城内の大広間の様なところに生徒全員が集められた。
一体これから何が始まるのかとソワソワしていると大広間に遅れてサリアとダリア、一条先生にアーレン国王が入ってきた。
四人は入ってくると座っている生徒達の目の前に立つ。
すると一条先生が腕を組みながら話し始めた。
「よし、全員居るな。まずお疲れとでも言っておこうか。色々とあったがよくやった。さすが私の生徒だ。この様に私達の役目をひとつ果たせた事は素晴らしいことだ。しかしその裏で
生徒は下を向き黙っていた。
しかし
「確かに東雲を追い出す様な事をしてしまったかもしれないですけど……本当はあの場にいたほとんどの人が生きてるかもしれない人を、東雲を助けようと思っていたんです!!」
「ほう。それで?」
「でも、でも、天伊が常日頃から東雲に近づけないようにしていて……もし助けたりしたら何をしてくるかわからないし……」
「私に言えば済むことだろ」
「それが無理だったんです……。だよね、新井さん。勇気を出して新井さんが一度放課後に先生に告発しに行こうとした日がありました。でも放課後、天伊、石羽、土井は新井さんの目の前に現れ襲ったんです」
「……それは本当か?」
するとメガネを触りながら怯えている新井
「は、ははは、はい。あ、あの日の放課後、私は襲われました……。制服を脱がされて……天伊くんはただずっと見ていました」
「新井、お前はそれを受け入れたのか?」
「そ、そそそんなことはないです! 抵抗したんです……でも土井くん、石羽くんが私を抑えて……最後は天伊くんが私の下着に触れて……その時、東雲くんがたまたま通りかかって助けてくれて……」
「それで?」
「三人は逃げていきました。それで東雲くんが私に先生に報告した方がいいって言ってくれたんですけど……でももし報告したら同じ事をされるかもしれないって恐怖で……」
「そうか。担任として気づけなかった私は教師失格だな」
一条先生が落胆したような声で言うとそれを生徒みんなが否定した。
「一条先生は悪くない」、「勇気を出せなかった自分達が悪い」、「もっと東雲くんの事を考えるべき」だったと自分達に非があるという事を必死に伝えた。
一条先生は一滴涙を零すがすぐに拭いていつも通りに戻る。
「やはり私は教師として完璧だったようだ。そして落ち度はお前たちにあった。というのは冗談だが私達には世界を救うという役目の他にもうひとつの目的がある」
「目的ですか?」
「あぁ、たった今出来たこのクラス最大の目的だ。それは東雲ハルトをもう一度見つけ謝罪しこのクラスに戻ってもらうことだ。ただこれには少々問題があるんだがな」
一条先生が困ったように話すと生徒が一体それは何かと聞く。
聞かれた一条先生だが話そうとせずなぜか焦らし始めた。
「先生、早く話さないと寝る時間なくなると思いますよ」
海斗のその一言でハッとなった一条先生はすんなりと話しだした。
「いやぁ、な? 二つ問題があるんだがな、一つはみんなも見たからわかってると思うけど東雲には二人の立派な女がついている。片方は背とあれは小さいが頼りがあって尚且つ可愛い。そしてもう片方は背は少し高く出るところはしっかりと出ていて男は簡単に落ちそうな見た目。そのうえテンションが高く東雲と相性が良いと感じた。果たして二人の女を持っている東雲をどう口説き落とすかが問題になってくる」
一条先生がそういうと一斉に女子は結華と麻衣美の方を向き男子は海斗の方を振り向いた。
結華と麻衣美は顔を赤らめて必死に反応した。
「い、いや私そういうのじゃないから! た、ただの親友で幼なじみなだけみたいだし……」
「わ、わわわ私はす、すすす好きというかファンというか底なし沼の様な魅力がぁ……!!」
「なんで俺の方向くんだよ。いっちゃん関係ないだろ」
「それじゃあ決まりだな。もし東雲に会い全員が謝罪出来たら春野、朝稲、南川が東雲を口説き落とせ。全力でな」
さらなる抵抗をされる前に一条先生はそう言い強制的に決定した。
「わ、わわ私がハルトくんを口説き落とす……お、おおおおこがましすぎなのではないでしょうか」
「だ、だから私はそういうのじゃないですから!!」
「結華、ツンデレを行き過ぎると良くないと思う」
「きょ、京香まで!!」
一方海斗の方では……クラスメイトの
「よろしく頼んだぜ! 海斗!!」
「ったくうるせぇな。お前ら俺が『ハ、ハルトくん……好き』なんてやったら気持ち悪いだろ」
「え、お前まじか。口説き落とす=告白にはならないだろ。こうなんかスカウトするみたいな方の口説き落とすだろ、この場合」
「幸治、お前、ハルト以上にだるいな」
「東雲を超えれたなら満足だぜ! あいつ話せばけっこう面白いからな。天伊がいなくなった以上俺達はもう自由だし早く東雲と話してぇ」
幸治がそう言うと周りの男子や女子が「確かに〜」、「私も話してみたい!」、「何カップが好み?」、「聞きたい事いっぱいあるしな」と言い合いざわざわし始めた。
その中で結華と海斗はなんとも言えない顔をしていた。
ざわざわを止めるために一条先生が「まだ話しはあるぞ」と言う。
生徒はすぐに静かになり一条先生の方を向いた。
「まぁ、課題名【東雲に謝罪し口説き落とせ】は長期間かかると思うからしっかりやるように。そしてもう一つこれはダリアから話しがある」
「課題に関しては俺達も全力で協力しよう。ただやはり世界を救うということは避けては通れない。現に何箇所から不審な出来事が多々あり来て欲しいという連絡を受けている。ちなみに次向かう場所は夢の都【レアルタ】だ。どうやらここ最近不審な者がいると連絡があった。もしこれが大きな組織、ましてや
「聞いての通りだ。またしても私達にやるべきことが舞い込んできた。だが全員得意なはずだ、そういうことは。課題と部活の両立、そんな事ずっとやってきたことだろ? だから全員これからしっかりやるように」
一条先生がそう言うと生徒は大きな声で「はい!!!!」と返事をした。
話しを終えた一条先生は「少し寝る。南川、時間になったら起こせ」と言って海斗に拒否する間も与えず部屋を出ていった。そして集まりはこれにて解散となった。
結華のもとにニヤニヤしながら近づいてくる楓と相変わらずクールな京香。
「なに?」
「よかったねぇ、よかったねぇ。合法的に口説けるチャンスが来て」
「沖田、やめとけ。怒られんぞ」
「いやぁ、こっちとしては早くハルトくんを引き戻してほしいんだよねぇ」
「まさかお前もか。和希に封印されてきた女子がここに来て爆発し始めたのか。まぁ、ハルトの良さに気づく人が増えるのは良いことだ」
「それが、ハルトくんの匂いを嗅ぎたくてしかたがないんだよねぇ。あ、いや変態じゃないから?? この
「きしょ」
「いや、普通にシンプルにひくのはやめてよ〜? せめていじってよ〜? 心持たないから!」
いつも通りの様な絡みをしているとダリアとアーレン国王が結華達の方へ向かってくる。
結華達はダリアとアーレン国王が向かってきていることに気付き静かになり視線を向ける。
どうやら結華達は目の前に国王がいるという状況に相当緊張しているようでなにやらソワソワしている様子だった。
緊張している結華達を前にダリアが話し出す。
「お前達が一番ハルトに関して必死だったからな。一応この情報は最初に共有しておこうと思う。アーレン国王曰く【カーシス村】を出たハルト一行はどうやら【レアルタ】に行ったらしい」
「なんでそんな事がわかったんですか?」
「なんか馬車の中から『次は夢の都【レアルタ】』と言っている大きな声が聞こえてきたみたいでな、本当に行くのかは分からないが」
皆が話しを聞いていると楓がまったく関係のない話題を話しだした。
その話題というのは城内にいたえっちなお姉さん、つまりはヴィーネのことなのだが楓がなぜそれを気になったのかは分からないが彼女の詳細についてアーレン国王に聞いた。
アーレン国王はどうやらヴィーネについて詳しく知らないらしい。
詳細じゃなくても構わないならという条件でアーレン国王は話した。
アーレン国王が言った内容はこんな感じだ。
そもそも神託官というのは元から【ロイゼン王国】に存在していた組織ではなくここ最近にいきなり現れたらしい。
国王は何度か抵抗をしようとしたものの圧倒的な力で鎮圧されあっという間に実権を握られたそうだ。
その後アッシュ、ロイエルは基本メルリルの命令のもと行動していったそうなのだがメルリルもまた何者かに命令をされている様な感じだったらしい。
そして四人の中で唯一政治や国のあれこれに全く無干渉だったのがヴィーネである。
ただヴィーネは四人の中で最も何を考えているのかもわからなければプライベートで出会うことすらないそうだ。
それだけ謎多きヴィーネはあの戦い以来行方がわからない状況だそうだ。
「ふぅぇ〜。あの人、犠牲者を解放する時やけにハルトくんの周りを警戒してたから何かあるのかと思ったんだけど〜」
「なんでそんな事がわかるんだ? 沖田」
「匂い? かなぁ。感情の匂いってのが凄く何となくだけどわかって〜、まぁ、当たってるかは聞かないとわからないけど」
「そうか。まぁ、お前達もゆっくり休めよ。ちなみに出発は明日の朝だからな」
ダリアがそう言うと結華達は「は〜〜い」と返事をする。
そしてダリアとアーレン国王はその場を去り部屋を出ていった。
「よしっ!! 私達もこれからに向けて頑張ろ!!」
「「「お〜!!!!」」」
「お、おお、お〜?」
一斉に拳を上にあげ誓いあったのだった。
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