第18話:C級レース御影賞7000mへの招待状

「あー行きたくない……」




「まだ言ってるのか?諦めろよ」




船室のVIPルームで私は唸っていた




2日後、先輩の故郷にある六甲レース場で開かれる御影賞に私は出る事になった私




始めはやんわりと断ろうとしたが、野良試合で得た稼ぎのありかを暴露しようかと言われ参加せざる負えなくなってしまったのだ




てかこれ一種の脅迫だよね……




「参加メンバーにイーグレット、貴方が入ってるのは嬉しいのよ。でもね、私は目立つのは嫌いなの」




普段は大きなレースが開催される事がない六甲レース場だが、今回は急遽特別レースが開かれる為、大勢のファン達が詰め寄るに違いない


さらに出るのが、半引退状態の先輩に、今一番輝いているイーグレットが来るとなると満員を超えるかもしれない




「もう関ケ原に出る時点で目立つの確定だから諦めろ。でも俺は嬉しいぜ。お前とガチで勝負出来るんだからよ」




【先頭の鷲と最後尾の希望】




【金と銀、王を制するのはどちらだ?】




【王の帰還、緊急レース開催】




私達の参戦が決まってからニュースサイトでは日夜お祭り状態である




普通レース登録は数カ月前に済ましておくのが常識、というかルールなんだけどそれが無視される時がある




【緊急特例空繰遊戯】と呼ばれ、主に最終レースの後に行われる




しかし、特別レースがそれに当てはまること事態が珍しく、先輩はどんな権力を使って開催させたのか不思議だ




「それはそうだけど……」




「飛行少女なら覚悟を決めろよ。後、花嫁にもいい所見せたいだろ?」




イーグレットはそう言って、ベッドで横になっているレイナを見る




レイナは何故か疲れたといいベッドに潜り寝息を立てている




うん、可愛い




「そう言われると何も言えないわね……」




私は椅子から立ち上がった




「どこ行くんだ?」




「すごく落ち着かないから船内を散歩してくる。レイナを頼めるかしら?」




「ああ、いいぜ。行ってこい」






VIPルームを出て船内の奥を歩く




本当はレイナの傍にいないといけないのだけど、落ち着かない




というか、先輩と戦いたくないという思いが強い




半引退状態とはいえ、元A級レースで10連覇したチート級の実力者


そして出場者は全員B級で勝利を収めている猛者ばかり。明らかに場違いだ




「んげっ!ホープ……」




ふと名前を呼ばれ、顔を上げると黒のローブに三角帽子姿の少女が驚いた顔で私を見ていた




「誰よあんた?」




「うちやうち!お前にカウンター喰らった飛行少女!」




そう言って帽子を取ると、その少女は備前で戦ったというか、一方的に因縁を付けてきた相手、マルガリータであった




「あら、ルミナスの教信者じゃない。ついにオカルトに走ったの?」




「んなわけあるか!うちの職業は飛行少女兼占い師や。プロフィールにそう書いてあったやろ!」




「そうだったかしら?」




「はあ!?選手のデータ見てないんかあんたは!?」




「見てるわよ。でも脳内からすっぽりと抜けていたわ」




実際、翼人化やら予防薬の効き目やら翼人について調べていて、それどころではなかった


そういえば、この子もレース参加者の一人だったわね




「失礼な奴やな!てかお前、どうしたん?めっちゃ思いつめた顔してるで」




「ちょっとね……」




「ああ!もう!煮え切らんなぁ!そんなコンディションでレース出るとなると気になるやんか!ほら


、こっちに着いてき!」




そう言ってマルガリータは私の手を取って、歩き出した




「ちょ、ちょっとどこに行くのよ!?」




「ええから黙って着いてきーな!」








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る