第12片

 レオはトイレでくずおれたまま呆然としていた。一番の大親友を失った代償は大きい。そう考えながら立ち上がり、走って会議室に向かった——————



 デイドリームは今になって(またやってしまった……)と反省した。夢香にしていたことをレオにもやってしまった。無視して飛び出すなんて、親友にすることじゃないと自分を責め、後悔した。デイドリームはレオがいない事を心配すると同時に罪悪感さえ覚えた。



 一方、レオは会議室の前で立ちすくんでいた。リアムに遅れた理由をどう伝えれば良いか考えて困っていた。長考の末、どう伝えるかを決めると、会議室のドアを開けた。



 「では、始める。出番のものはこの画面に映す。ではA対Bだ。準備し……」


 「ちょっと待ってください!」


 入口の方から大きな声が聞こえた。デイドリームはレオを視認するとほっと一安心した。安心したのもつかの間リアムがレオに問いかけた。


 「なんだ。遅れた人の第一声がそれか?何があったんだ?」

レオは黙り込んで、沈黙が続いた。


 そしてようやく話し始めた。

「トイレに行ってました、遅れてすみませんでした。」


 すると、リアムは持っていたボードに減点チェックを入れた。デイドリームが減点された時より筆圧が強かった。話をさえぎられたのもあるのか、怒っているように見えた。そして、リアムはさっきの続きを言った。


 「A対Bだ。レオ・ウォーカーも出番だ」


「え、ルールはどうすれば……」


「そんなもの知らない。遅れたからな。参加させてはやるがルールは自分でなんとかしろ」


「え?そんな!」

 レオが言うとリアムは「いいから行け!」と今まで出したことのない大きな声を出した。周りはそれに反応して静かになった。



 デイドリームは、周りはオーラを感じていないのかと思っていたが、しっかりオーラを感じ取ったようだ。


 (リアムがこれほどのオーラを出しているのに何も反応しないなんてありえないもんな)と勝ち誇ったように思った。


 「さっきはこのオーラに負けたんだぞ」と言いたくなる。そして「お前ら鈍感だな」とまで言いたくなったが声が喉まで出かけて止まった。



 レオはルールを参加者に聞こうと決めたようで、女子と話している。やっぱりコミュ力が高いなと思った。あとでレオに謝ろうと決意した時、缶蹴りの試合が始まった。

 


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