第39話 確定事項
<エドワード視点>
「あれがヴァレンティン王だ。どう思う、エドワード」
王座の後方で影のように隠れていたエドワードが現れる。
「小心で狭量。考えが浅く、個人的な感情から戦争にまで発展させる愚か者ですな」
嫌悪感を抱きながら言う。
「ははは、随分と手厳しいな。何か良いところはないのか?」
「評価できるのは、陛下に頭を下げに来たところくらいでしょうな。ただそれも国民を思ってではなく、自分自身の保身の為でしょうが」
「まあ、その通りだろうな。おい、水を一杯」
皇帝の一声で給仕が直ぐに水を運んでくる。
皇帝はそれを一気に飲みほす。
「そもそもの発端は軍事的優位にあった時に、ヴァレンティン王国がエスペリア王国に対して度重なる挑発を行い、それに対して我慢の限界を超えたエスペリア王国が起死回生の策で異世界召喚を行ったという経緯でしょう?」
「そうだな」
「自ら今回の事態を招いていて、それで不利になったから他国に解決してもらおうなどというのは随分と虫の良い考えですな」
「お前の言う通りだ」
「私がまさかりとして飛ぶことで、ヴァレンティン王の利益になるのが気に入りませんのう」
皇帝は苦笑いする。
「まあ、そう言うな。この争いの後、奴らからは王位を剥奪する。それにエスペリア王国に乗り込むと言ってきたのはお前の方だぞ。今回も単騎で乗り込むのか?」
昔のことだが一人で小国を相手取り、王城に乗り込んで王の首を取ったことがあった。
「流石に歳なので一人は年寄りには厳しいですのう。後一人は帝国の
現在、帝国には
帝国の魔術師たちの頂点に存在する魔術師だ。
「よく言うわ、年寄りは数人で他国に殴り込みに行ったりせぬぞ。
「ありがとうございます」
ほっとする。
却下されたら人選をまた考えなければならなかった。
「二人で殴り込みに行くのか?」
「最悪は。後一人、連れていきたいのがいるのですが、同意が得られるかどうかはまだ不明です」
「ほう、お前とラナに並べて連れて行くのか。何者だそいつは?」
皇帝は興味を惹かれたようで身を乗り出して問いかける。
「ユウというまだ若い青年です。異世界召喚人で召喚国のエスペリア王国から、なんらかの理由で追放された模様で」
「異世界人か……異能か?」
「異能もあるかもしれませんが、率直に言って強いです」
「……お前よりもか?」
「はい、おそらくは私の全盛期であっても太刀打ちはできないでしょう」
「そんな者がいるのか!」
皇帝は興奮して立ち上がる。
「…………しかし、ユウを味方に引き込めなかった場合は?」
「要警戒対象にはなるかと思いますが、基本は刺激せずがよいかと」
「最警戒対象になるな。そいつの剣は単騎で私まで届くだろう?」
「…………」
返答に困る質問だが、正直に答える。
「正攻法ではなかなか帝国最精鋭たちでも止めるのは厳しいと思われます」
「是が非でも味方に引き込め!」
「御意にて」
「はっきり言ってこんなつまらない争いより、そちらの方がよほど重要だ。金に権力、望むものはなんでもくれてやるとユウとやらに伝えろ」
「陛下直々にとお伝えしてよろしいので?」
「ああ、構わん」
「承知しました」
これでユウが望めば何でも手に入るだろう。
この陛下の勢いなら望めば小国くらいなら与えかねない。
「ちなみにこの争いの落とし所はどうするおもつりでしょうか?」
「いずれにせよ…………両国王はその王位を剥奪。その後は遺恨を残さないように上手いことやってくれと外交官に丸投げだな」
まだ訪れていない未来ではあるが、いつもこれだと知り合いの外交官の愚痴が聞こえてくるかのようだった。
これで両王国ともに終わりは確定だ。
「それでは私はせいぜい暴れてきます」
「死ぬなよ」
「冥土の土産はもうできておりますので」
「ふふ、なら心置きなく暴れてこい」
一礼の後、陛下の王座の間を辞する。
エドワードは自身でも驚くような高揚と闘争心が溢れてきているのを感じた。
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