第14話 仲裁

「ユウとか言ったかの? わしの名はエドワードという。」


 俺は黙って頷く。


「労力をかけていた獲物を横取りされる気持ちは分かる。だが勇猛と蛮勇は違うぞ。すべての戦いに必要な基本的な能力がなにか分かるか?」

「……分かりません」


 少し考えたが答えは浮かばなかった。

 質問が抽象的すぎるし、ちょっと前までただの高校生だった俺に答えられる質問ではない。


「相手の強さを推し量る能力じゃ。彼女、フェリシアは敵の強さを推し量った上で戦いに挑んでいた。時には強大な敵に立ち向かうことも必要じゃ。じゃが、そもそも敵の強さ自体が測れない時は敵に挑むべきではない。それはそれだけ自分が未熟という事じゃ」

「ええ……まあ、言ってることはわかります」


 なんで俺が敵の強さを測れない前提になっているのか、納得できない所はある。

 だが、じゃあ真理洞察トゥルースビジョンでステータスを確認できるなんて言うわけにはいけない。

 この魔法が世界の常識では相当異質であることは、事前に把握していたからだ。


 フェリシアの方をちらっと確認すると、フフンといった感じで得意げな顔をしている。

 くそ、ムカつくな。


「フェリシア、そなたも間違っているわけではないが、人への助言をする時には言い方というものを考えないといけんぞ」

「はい……よく言われます」


 予想外に得意げしていた顔がシュンとなる。

 素直な所もあるのかな。


「その剣の紋章、天穹騎士団てんきゅうきしだんのものじゃろう」


 彼女は目を見開く。

 なんだろう天穹騎士団てんきゅうきしだんって?


「よくご存知で」

「だてに長く生きとらん。ならば尚更、言い方には気をつけんとな。民を救ったとしてもその後の言動で恨まれることすらある。人の上に立つものは自然に責務と、それにふさわしい人格が求められるものじゃ」

「肝に銘じます」

「よし、それじゃあ、お互い仲直りの握手をするかの!」

「っ!?」

 

 俺とフェリシアはお互い顔を見合わせる。

 

「それは嫌です! なんでこんな奴なんかと!」


 フェリシアは顔を赤くしてそっぽを向く。

 

「俺だって嫌です!」

「なによ!」

「なんだよ!」

「やれやれ」

 

 結局仲直りには至らなかった。


「まあ、紅茶でも飲んで落ち着くっす」


 いつの間に用意したのか、ロイは一人一人に紅茶を手渡す。


「どうも」

「ありがとう」

「珍しく気がきくのう。ひょうあられ なんかが降らないといいがのう」


 エドワードは空を見上げながら述べる。

 空は相変わらずの雲一つない晴天であった。

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