第103話 反撃開始
「では、行ってまいります」
「うむ、頼んだぞ」
義重は義宣を見送る。
「その兵糧はこの戦を左右する物。決して敵の手に渡すなよ」
「分かっておりまする。必ずや、政宗様の元にお届け致します」
義宣は軽く頭を下げると号令をかけた。
「開門!」
それと共に城門が開く。
そして、荷駄を率いる兵達と、それを護衛する兵達が現れる。
大垣城を守っていた城兵と佐竹の兵の混成軍であった。
その中には、斎藤徳元と後藤又兵衛もいた。
そして、それを率いるのは佐竹義宣である。
「進め! 清須へむかうぞ!」
佐竹義重と南部利直はそれを見送る。
「……我が軍は兵糧に困っておる……要所となる犬山城に、そして伊達殿の本軍に早い所届けなくてはな……さて、我々はここを守る手筈を整えまするか」
「うむ。しかし佐竹殿。状況によってはこちらから動くのも視野に入れて置かなければなりませぬな」
「……このあたりか……」
義宣は馬の足を止める。
「止まれ!」
そして、軍の足も止まる。
「殿? 如何なされたのですか?」
「……」
佐竹義宣はしばらく考える。
そして、刀を抜く。
「これより我が軍は大垣城を包囲する! 敵は徳川方だ!」
「と、殿!?」
諌めようとする家臣に義宣は刀を向ける。
「今こそ石田殿への恩を返す時! 豊臣への忠義を、石田殿に代わり、成し遂げる! 邪魔立ては許さぬ!」
「し、しかし豊臣方には石田様を討った織田がおるのですぞ!」
義宣は続ける。
「それは知っておる。されど、豊臣に弓を引くことこそ石田殿は望んでおらぬはず! 儂は石田殿に天下への野心があったなど全く信じておらぬ。左近殿には悪いが、儂は儂のやり方で織田の悪事を暴いて見せる」
「良くぞ申された。義宣様」
すると、後藤又兵衛が口を開く。
「間もなく長政様も来られます。合流して大垣城を包囲。敵は大軍を城に残ったわすかな兵糧で耐えなければなりませぬ」
「……そこまでは理解している。しかし、黒田殿と我等の手勢のみで敵を抑えられるか?」
「そこは心配ありませぬ」
すると、黒田長政が姿を表す。
僅かな供回りのみでここまで来たようだった。
「某に考えがありまする。任せていただければ、必ずや敵を降伏させて見せましょう。既に我らの手勢も支度は整えてありまする」
「……分かった。任せよう」
長政は頭を下げる。
「ありがとうございまする。さて、ここからが正念場。兵力で不利な今、気を引き締めて当たりましょうぞ」
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