第100話 大垣城の戦い

「……これは」

 

 黒田長政が大垣城につくと、既にそこは戦場であった。

 大垣城自体はまだ持ちこたえていたものの、既に包囲されており、戦の真っ最中であった。

 

「あの旗印は……南部だったか?」

 

 黒田長政は大垣城を囲む南部利直の軍を見る。

 南部は奥州の有力大名であったが、政宗より侵攻を受けて、その勢力下に入っていた。

 

「更には佐竹の旗もありますな」

「……又兵衛。どう見る?」

 

 長政は又兵衛と共に敵陣を見る。

 

「たしか、大垣城を守るは斎藤徳元と申す者」

「その者は、どういう者なのだ?」

 

 長政の問いに又兵衛は答える。

 

「は。かつて美濃のマムシと呼ばれた斎藤道三の曾孫との事です。前は墨俣城を任されていたようですが、大垣に移ったようですな。中々の切れ者との事です」

 

 長政は頷く。

 

「成る程。なにはともあれ、早い所助けねばな」

「ですが、兵力差は歴然。そこはいかが致しますか」

 

 長政は暫く考えた。

 

「……考えはある。又兵衛、頼めるか?」

「は。なんなりとお申し付けを」

 

 

 

「手強いな……そろそろ落ちても良いと思うのだが……」

 

 南部利直は大垣城を総攻撃していた。

 しかし、その粘り強さに奥州連合軍は苦戦していた。


「城将はあの美濃のマムシの曾孫だとか……」

「どおりで手強い訳だ……」


 すると、伝令が駆け込んでくる。

 

「殿! 後方より敵が!」

「来たか! 予定通りに動け!」

 

 伝令は頷き、その場を後にする。

 

「よし、我等はこのまま大垣城を落とすぞ!」

 

 南部勢は城門に攻撃を開始する。

 城壁にもはしごを掛け、城に取り付く。

 

「ぐあっ!」

 

 すると、銃声が轟き、はしごから城壁を登る兵が落ちてくる。

 次々と落ちてくる。

 

「何事だ!」

「わ、分かりませぬ!」

 

 次々と銃声が鳴り響き、味方が死んでいく。


「一体何が……」

 

 

 

「面白いように落ちていくな」

 

 斎藤徳元は城の中から敵を見渡す。

 

「後はどれほど持ちこたえられるか、か」

 

 徳元は城壁に兵を並ばせ守るのではなく、敢えて敵を城壁に登らせ、一人ずつ登って来た所を一人ずつ狙い撃ちにしていた。

 それにより、弾を無駄に撃たず、敵を撃退していた。

 

「これは大量の鉄砲と弾があってこその策。いずれは弾も尽き、綻びも出よう……」

「殿!」

 

 すると、伝令が駆け込んでくる。

 

「城門が破られそうとの事です!」

「うむ。予定通り、鉄砲隊を城門の前に並ばせよ」

「は!」

 

 伝令は去って行く。

 そして、徳元も前線へ行く。 

 

「果たして、どこまでうまく行くか……」

 

 すると、城門が破られる音がした。

 

「一気に攻め込め!」

「放て!」

 

 それと同時に銃声が轟く。

 そして、また銃声が響く。

 徳元は銃兵を複数列用意し、絶え間なく射撃を行わせた。

 それにより、続々と南部兵は倒れていった。

 

「今だ!」

 

 徳元の指示で地面から柵が起き上がる。

 

「な、何だこれは!?」

「突け!」

 

 突如として現れた柵に阻まれた兵達は、困惑する。

 その隙をつき、徳元の指示で槍が繰り出される。

 

「くっ! 一旦退け!」

 

 南部は兵を引いた。

 大垣城はひとまずは守り抜いたのだった。

 

「さて、一先ずはこれで良し……後は外の友軍に任せよう……」

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