第62話 会談
「織田、三郎に御座います。」
「黒田如水に御座る。」
両者は熊本城近くの小さな寺で会見をする。
「この度は降伏を受け入れてくださり、誠にありがとう御座いまする。」
「……この度の戦、責は全て某にありまする。どのような処罰でも、甘んじて受け入れまする。」
如水は三郎に頭を下げる。
「お顔をお上げくだされ。如水殿。此度の戦、誠に良き戦でありました。某の生涯で、あのような戦は中々無い。」
「生涯?お若いようですが……中々経験を積まれているのですかな?」
「……あ。」
すると、三郎はあわてて口を閉じた。
目を逸らし、あからさまに動揺していた。
(……勘助に精神年齢が肉体年齢に引っ張られていると言ったが……俺も変わらんな。)
三郎は軽く咳払いし、話を戻した。
「……さて、信包様からお話はお聞きしておりまする。負傷した者達の治療について、話がしたいと。」
「は。我が黒田家の重臣、栗山善助が傷を負いました。彼の者はかなり優秀。我が息子の長政の良き支えとなるでしょう。兵達もかなりの強者。どうか、良い医者をおつけ下され。」
如水は自分の足を見る。
それを見た三郎は頷く。
如水が、栗山善助に自分のようになってほしくは無いという思いを三郎は受けとった。
「勿論に御座います。良き医者については心当たりがありまする。如水殿の足も良くなるやもしれませぬな。」
「……それは。」
三郎は頷く。
「信包様にもお伝えしてありましたが、私はどのような状況でもあなたのお命を奪うつもりはありませぬ。周りの者が何を言っても、必ずや守りまする。」
「何故……そのような……。」
三郎は虎助に視線を送る。
「こちらを、後でお読み下され。」
「……うむ。」
この会見はそれぞれ一名ずつ側近を連れてきている。
如水はそれが人に知られたくないないようなのだと理解した。
「如水殿。あなたとはまた後で、二人きりでお話がしとう御座います。色々と、お伝えしたいこともございます故。」
「……無論にござりまする。城に戻ったらすぐにでも用意致しましょう。」
両名は互いに見つめ合う。
それは、まだ会談が終わっていないことを示していた。
「医者についてはすぐに用意できまする。お戻りになる際に、共に連れて行くがよろしいでしょう。」
「……では、一度戻りまする。」
三郎は頷く。
「城に戻った暁には一度城を明け渡してもらいたい。我等は長旅でここまで来たので、帰る前に一度休養を取りたいのです。その後は城は返しまする。」
「無論に御座る。……そのままそちらの物でもよろしいのだが……それに、先程まで殺し合っていた者達が共にいるとなると、問題は起きそうですな。」
すると、三郎は頷く。
「それも、考えてありまする。」
「未然に防ぐ策が?」
三郎は首を横に振る。
「いえ、如水殿のお命を確実に救う為の策にございます。某が如水殿のお命を救う理由付けに御座います。」
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