第14話 変わりゆく歴史
「殿、書状に御座います。」
「誰からだ?」
「織田中納言様からにございます。」
赤坂夜襲と時を同じくして。
殿と呼ばれた男は書状を受け取った。
この男は、立花宗茂。
西国無双と謳われた猛将である。
西軍に属し、東軍に属している京極高次が守る大津城を攻めていた。
「中身はなんと?」
「決戦の時が近く、西国無双と謳われた立花様のお力が必要だと。急ぎ東、関ヶ原へ来て欲しいと。」
史実通りならば大津城の戦いにより足止めを食らった立花宗茂達西軍一万五千は関ヶ原の決着がついたその日に城を落とし、関ヶ原に間に合わなかったのである。
「しかし、何故織田殿なのでしょうか……。」
「……石田殿は戦上手とは言えぬらしい。が、織田中納言殿は岐阜城にて大軍を相手に戦い抜いたらしい。……恐らく独断であろう。」
岐阜城の戦いの経緯は大津城を包囲する西軍にも伝わっていた。
織田秀信は戦上手として伝わっていた。
が、徳川家康が赤坂に着陣した事はまだ知らされていない。
「……ここの城攻めは他の者に任せよう。我等は少数の精鋭を率いて東へ向かう。」
「はっ、そのように伝えておきまする。」
家臣はその場を後にする。
「ふ、面白くなってきたな。」
「殿。岐阜、合渡、それに先程の赤坂の夜襲により我等は多くの兵を失いました。このまま決戦に臨んでは……。」
「わかっておるわ。」
徳川家康は苛立っているのか忠勝の言葉を最後まで聞かない。
「では、如何いたしましょう。福島殿は傷を負い、兵も損耗がが激しく、領地に帰られました。田中殿は討ち取られ、藤堂、池田勢も壊滅的。」
「……秀忠を待つ。」
東軍の別働隊を率いる徳川秀忠。
徳川家康の嫡男であり、後の江戸幕府二代将軍である。
今は真田信繁とその父、真田昌幸が守る上田城攻めをしていた。
秀忠はひどく苦戦したという。
「仕方があるまい。あまり時をかけたくは無いが……兵が居ないのでは戦いようが無い。万全の状態で挑もうぞ。」
「家康様!」
軍議の場に現れる一人の男。
名を水野勝成という。
「勝成か。如何した。」
「関ヶ原が決戦の地と聞きました、俺も行きとう御座います!」
「勝成!無礼であるぞ!」
忠勝が叱責する。
「よい、勝成、お主には大垣城の抑えを任じようと思っておったが……。うむ、良かろう。ついて参れ。」
「はっ!感謝いたしまする!」
水野勝成は深く頭を下げた。
この男、十六の初陣の折、十五の首級を上げ、織田信長を驚かせたという。
天正壬午の乱では北条軍一万に対し数百の手勢を連れ突撃し内藤某含む三百の首級を上げたという。
他にも逸話は数しれず、一つ言えるのは、かなりの猛将であるという事である。
「この戦、負けるわけには行かぬ。三成もそれを分かっていよう。決戦はまだ先じゃ。」
歴史は、少しずつ変わって行こうとしている。
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