まさか転生してもゴミ箱人生だとは思いませんでした!今度は無双して、立派なゴミ箱になってやる!

すぱとーどすぱどぅ

第1話 平凡な大学生、将来の不安は特になし

「まずい、もうこんな時間か…」


 高橋悠人、21歳。ただし、借金は2000万。


 このどこにでもいるような大学生の俺は、いつものように気を失っていた。


 「大学行かないと……」


 通算382連勤。


 寝る時間もすべてバイトに当てているので、最近は睡眠時間が1時間を切る日が続いていた。



 眠すぎる……!


 もう眠いを通り越して、気を失うんだよな。


 ……ああ、ねそ~。


 ――いや、これ以上の遅刻は単位落としちゃう。




 椅子からゆっくり立ち上がり、水を飲むために水道へ向かう。


「まじか。水道止まってんじゃん」


 ついに水すら飲めなくなった。


 まじいな。


 朝食は……よし食パンがある。


 1日1枚。それ以上は食べられん。



 その間、頭の中はぼんやりとしたままで、なーにも考えていない。


 まるで、自動操縦で動いているかのようだ。


「行ってきまーす」


 誰もいないひとり暮らしの部屋にごあいさつ。


 両親はいない。もう借金地獄に耐えられなくなって、もれなく蒸発しちゃったから。


 防犯対策にいいよ!ってテレビでやってたからずっと続けてるけど、すっごい寂しい気持ちになるんだよな。


 彼女ほしー。


 彼女に見送られるところを想像しながら家を出ると、冬の寒い風が体を包み込んだ。


「さっぶ」


 ――なんで冬の風ってこんなにまとわりつくように吹くんだろーな。


 夏の風はすぐいなくなるのに。おかしい世の中だわ、全く。





 大学への道のりは、いつもと変わらない。


 駅までの道を歩きながら、俺はいつものようにすれ違う周りの人たちを観察する。


 ――あのカップル。毎日毎日朝帰りかよ。ちょーうらやましいな。くそー。


 ふと自分の恋愛事情を思い出すが、すぐに「まぁ、いいか」と気にしないふりをする。



 大学が近づいてくると茶色いパウンドケーキのような建物がどんどん大きくなっていく。


 ここは、都内でも有数の国立大学だ。


 死ぬ気で勉強して入った大学。


 まさか、あの時は借金地獄になるなんて思わなかったもんな……。


 父親の会社が倒産したのは3年前のことだった。


 倒産するまで、会社の業績が悪かったなんて知らなかった俺は一瞬何が起ったか分からなかった。


 もちろん自己破産申請はした。


 けど、それだけじゃ終わらなかったんだ。


 父親は闇金に手を出していた。


 闇金は、自己破産など知ったことではなかった。


 親父は自殺して、生命保険をなんとか借金返済に充てたが、それでも借金が3000万残ってしまった。



 そして、借金生活に耐えられず、両親が練炭自殺。


 残された大学生の俺に3000万の借金ができた。


 それも必死に返して、あと2000万。


 もう大学3年になる。


 後は、大企業に就職して、借金を返すだけ。


 あと2年の我慢だ。




 大学に着くと、自動操縦で講義室へと向かう。


 講義の内容は、頭の中を通り抜けていく風のように、あまり残らない。


 ノートには教授が言ったことよりも、眠い気持ちが頭を満たしていく。



 午後の講義が終わり、家に帰る道すがらふと考える。


「俺って、何のために大学生やってんだろ?」と。


 周りは楽しい大学生生活を送っている。


 彼女を作ったり、飲み会したり、旅行したり……。


 なのに俺は毎日生きていることに必死。


 奨学金という借金も膨らませながら、日々を生きている。





 ――死にたい。


 そう思うこともあったけど、結局は何もできずじまいだった。





 授業が終わり、教室を出る。


 今から1つ目のバイトだ。


 頭がぼーっとする。


 寝たい、水飲みたい、気持ち悪い。


 電車乗らないと……。






 あ……電車くる。




 あっ










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