第14話 ママの言葉使いが豹変する

未だその白昼夢の真っ只中にいるからだが、しかしそれを押しのけてでも理由(わけ)を知りたかったのだ。あり得ないストリップショー、手のまさぐりを許してくれたこと、昼にも拘らず俺の為に(?)開店してくれたこと、ママの顔付きが激変したこと、さらにはママの言葉のイントネーション等々…不思議なことばかりだ。「ピュグマリオン、ゲンジツノオンナ、スキジャナカタ。デモオンナ、スキ。ダカラクルシイ、サビシイ。アナタトオナジネ」。俺は思わず吹き出してしまった。言葉遣いにではなく俺の心の内を当てられ、それをまさぐられているような気がしたからだ。CT用語ではないがこの瞬間ママと一瞬でも同期したような塩梅ともなる。ママは軽笑して「ウフフ、違う?相当飢えてたわよ、さっきのあなたの目。ピュグマリオンさんに応えてあげなければ、彫像に命を与えてあげなければ…って思った次第。だからピュグマリオンって云ったの。お判り?」。俺は目を丸くした。又してもの豹変だ。外人のというか、CT発音というか、たどたどしかった言葉使いが一瞬のうちに綺麗な日本語へと変わっている。ママへの同期をうち忘れてこの一点に俺の意識が集中する。俺の目が剣呑にでもなったものかママはたじろいだ風情で「ワタシノコトバヅカイ、キニシナクテイイヨ。コワイメシチャ、ダメ。チョーゾウニモドッテシマウ…」と今度はCT発音に戻ってしまっている。これはこれはとばかり俺の思考は錯綜するのだが同時に現れたこの奇跡への、その解明へのとっかかりをつかんだような気にもなっていた。未だまったくおぼろげな感覚でしかないのだがそのインスピレーションに間違いはなかった。

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