21話 遺跡にて


 俺とスピナーは遺跡の調査の為に中を探索する。ついでに月の雫の面々も一緒だ。

 どうやらこいつらも目的も遺跡の調査らしい。

 と、そこで俺は疑問に思った。なんで高ランクであるこいつらがこんな何もないようなところの調査をしているのかと。


 気にはなるが聞く度胸はないので、代わりにスピナーの目的を聞くことにした。



「なぁ、なんでここに調査に来たんだ?」


「あれ、言ってなかったか?」


「なんも聞いてねぇな。気になることがあるとしか聞いてない」


 遺跡の中を歩きつつも、ちょっと不貞腐れてみる。そんな様子を取ったからか、スピナーはバツが悪そうに頬をかきながら口を開いた。


「……本当に大した用事じゃないんだ。ほら、アリス達が狂蒼龍を討伐しただろ? それに関することでちゃっとだけ気になることがあったんだ」


「気になること?」


「本来、狂蒼龍はアステラ王国の付近、死者の谷って所に住み着いているんだ」


「死者の谷……すげー物騒な名前だな」


「そりゃ危ない所だからな。死者の谷は毒ガスが充満していて人間が生きていられる所じゃない。死んでいる者しかいない。だから死者の谷ってわけ」


「オーウ」


 思わず身震いしてしまう。そんな危ない所で生活してたんか、あの龍は。


「で、ここからが本題だ。あの龍が死者の谷から出た、なんて情報は今まで無かったんだ。これまで一度たりとも」


「え、一回も?」


「あぁ。おかしいと思わないか? なんでこれまでに一度たりとも出て来なかった奴がなんの前触れもなく寝ぐらから飛び出すんだ?」


「いや、そりゃ散歩とか餌とか取りに行ったんじゃないのか?」


「だから、そんなのは今までなかったんだって」


 それは今日がたまたま初めての外出だったのでは? と、出かけたのでお口にチャックして止めた。

 


「話の続きだけど、それがどうにも引っかかったんだ」


「それが、ここに来た理由か? それならアステラ王国に行った方が良いんじゃないか?」


「いや、アステラ王国に有力な情報はない」


「なんで断言できるんだよ」


「それは……まぁ、色々あんだよ」


 なんでそこではぐらかすんだよ。気になるが無理に聞き出す訳にもいかないので流す。





 そこからみんなで遺跡を探索して1時間が経過した。


「なんか満足のいく結果に終わりそうか?」


「いや、まだ何も」


 でしょうね。眉間に皺がよっているので大変分かりやすい。

 一応は、月の雫の奴らも何か探しているが、あちらも有力なものは見つけ出せていないようだ。


「お前はどんなのを探そうとしてんだよ」


「………それが、分からない」


「は?」


「どんなのかは俺にも分からない。物なのか、文字なのか、絵なのか。ただ、昔に聞いた話で似たような現状が当てはまって気になったってだけだ」


 つまり、無駄足ということだったわけか。まぁ、俺は罰として連れて来られたわけなので何も文句などは言えない。

 もし、言ったらスピナーに殺される。


「とりあえず、そこらへんを散歩してくるわ」


 スピナーは短く返事をして、再び考え込む。本当にこんな古ぼけた所になんかあるのか? 到底そうは思えない。


 そもそもの話だ。もう狂蒼龍は討伐された。それを掘り返してなんになると言うのだ。


「……ん?」


 床に不自然な形の穴があった。

 龍の絵の目の部分に不自然な丸い穴が。

 これはなんだろうか? 誰かが意図的に空けたとしか思えない。

 気になったので覗いてみた。


 

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