第47話 帰路
俺たちは魔導船が来るのを待つ。臨時講師を初めて7日が経った。つまり、今日で臨時講師は終わりなので帰る。いや、それにしてもーー
「……疲れたぁ」
疲労がすごい。その原因はあの学長だ。あの後に学長がカーラに耳打ちするとカーラが怒った。それはもう凄かった。魔法を撃とうとしてたので止めるのに必死だった。ある意味ではジゼルとの戦いより疲れた。
「グレンさん、大丈夫ですか?」
「お兄ちゃん大丈夫?」
「あぁ。ちょっと学長との話でな」
俺が力なく笑うとカーラは気まずそうな顔で視線を外す。一体何を言われたのかも気になるがそれより今は寝たい。早く魔導船の中で休みたい。
「あ、来ました。では乗りましょうか」
俺たちは魔導船の中に入る。もう頭がほとんど回っていない。俺は簡単に着替えてそのまま端っこのベッドの上に寝転がった。
「………これ、やばいな」
天にも昇るような気持ち良さだ。頭もふわふわするし、このまま寝よう。
「お兄ちゃん眠たいの?」
「あぁ、かなり限界だ」
「ふぅーん。じゃあ私も寝る!」
ルキナも寝るのか。横があったかい。寝るって俺の隣で寝るってことなのか。カーラがいるから隣で寝なさい、なんていう気力もない。俺は目を閉じる。
「お兄ちゃん。頭撫でてー」
「へいへい」
俺は頭を撫でる。もう目を開けるのもしんどいので目を閉じたまま、手を動かしていく。うん、このままちょっと寝るか。
「……あの」
「んん? どうしたぁ?」
「いえ、あの……」
「??」
カーラは何故か言葉に詰まっている。ぼやけた目、働かない頭。俺はかなり限界だ。早く言わないと俺は寝てしまうぞ。
「………いえ、やっぱりなんでもありません」
「俺に、何か言いたいことでもあったんじゃないのか?」
「はい。でもちょっと、やっぱり迷惑だなと思ったので」
俺は眠気で限界だったので目を閉じる。再び目を空けてカーラを見るがまだぼやけている。今、カーラがどんな顔をしているのか分からない。多分、申し訳なさそうな顔をしていると思う。
「この状態で出来ることなら良いぞ?」
「そ、そうですか」
カーラは一度大きく深呼吸をしてる。そんなに覚悟を決めないと駄目なことなんだろうか?
「わ、私も……その、ルキナさんみたいに」
「ルキナ?」
俺は眠っているルキナを見る。俺がルキナにしてることは頭を撫でてやっていることだ。つまり、カーラも頭を撫でてほしいってことか?
「その、ルキナさんが幸せそうに寝てるのが気になっただけですので無理にとはお願いはしないのですが、どんな感覚なのかを確かめたいだけですしグレンさんも眠そうなのでやっぱり大丈夫ですゆっくりと休んでください」
カーラは捲し立てるように早々と言う。うん、何を言ってるのかほとんど聞き取れなかった。ただでさえ、頭が働いてないのであんなのを聞き取るのはほぼ不可能に近い。
「……とりあえず、ほら」
「………はい」
俺が左手を出すとカーラは近くに椅子を置いて座る。そのままとんがり帽子を脱いで俺に頭を近づける。俺はカーラの頭を撫でた。
「どうだ?」
「ちょっと恥ずかしいですけど……確かにこれは気持ち良いですね。」
「そりゃ良かった」
そにしても、カーラの髪はさらさらだな。これだけ長いと手入れも大変なはずなのに。俺と同じ黒髪なのにこうまで違うのか。
「………(カーラの髪の毛はさらさらで)好きだなぁ」
「??………っ!?!?」
俺は眠った。
▲▲
「グレンさん!? さっきのはどういう!?」
「すぅー、すぅー」
駄目だ。もう彼は寝てしまっている。本当は起こして聞きたいけどそういう訳にもいかない。
「……あれ?」
そこで私は気づく。顔が熱い。それはもう顔から火が出ているのではないかと思うくらいに。私は一度鏡で自分の顔を見る。
「………あ」
そこには顔が真っ赤になった自分が写っていた。私はこれは本当に自分なのか確かめる為に顔をペタペタ触る。
「………どうして?」
こんなこと知らない。今までになったことがない現象だ。体は熱いのに、不思議と悪い気分はしなかった。
「……ど、どうしましょう」
この真っ赤になった顔をどうすれば良いのか分からない。果たして元に戻るのだろうか。
「そ、そうだ。お水」
熱いなら冷ましてやれば良い。私は洗面所で顔を洗うことにした。それから私は自分の顔色が戻るまで、冷水で顔を洗い続けた。
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