『虚栄心のトロフィー』/『休暇取得率2割弱』/『無口で寡黙な耳栓』/『祝われるとその土地に愛着が湧くよね』/『残酷な影』

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『虚栄心のトロフィー』



 同僚の家に遊びに行くと、部屋には多くのトロフィーが飾られていた。


「学生時代なにかやっていたのか?」

「水泳と剣道、陸上短距離……百人一首に絵画、他にも色々と手を出したな」

「そんな多くの競技で入賞してきたのか!?」

「いいや、入賞経験は無い」

「……?」


「全部、自腹で発注したトロフィー」



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『休暇取得率2割弱』



 社長が福利厚生の一環で、社員が連休を取れる制度を決定した。

 そして、この休暇の名称を全社員から募集し始めた。


「早速だが、なにか提案はあるか?」

「『思いつき休暇』とかでいいのでは」

「それなら『自己満足休暇』じゃない」

「さすがにそれは駄目だよ。『独りよがり休暇』ぐらいにしておかないと」



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『無口で寡黙な耳栓』



 私は『物』の声が聞こえる。

 子供の頃は小声で僅かに聞こえる程度だったけど、成人した今では、息遣いがわかるくらいはっきりと『物』の声が聞こえてくる。


 特に困るのが眠るとき。

 この耳栓に出会えるまで、私の眠りはいつも浅かった。


「きみに出会えたおかげで、私は普通の生活を送れるよ。ありがとう」



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『祝われるとその土地に愛着が湧くよね』



 この観光施設では、来場者に合わせて『来場者数1万人を祝う記念セレモニー』を行っている。

 来場者は観光客や移住者ばかりで、近隣住民が訪れることはない。


「そろそろこの垂れ幕も限界ですね。新調しません?」

「そう思って発注は済ませてあるよ」

「綺麗な垂れ幕を使えば、まず気づかないですからね」



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『残酷な影』



 たった今、日傘のことが嫌いになった。

 ガラスを挟んだ先、炎天下のもとでいちゃついている男女。

 俺の目の前で、1つの日傘を共有している、元カノと知らない男。

 2人で1つの影を作り、幸せそうに歩いている。

 冷房のかかった店内で、くつろいでいる俺より、あの2人のほうが幸せそうだ。


「……さむい」



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