第22話 遭遇

ゾーブを先頭にして、7人はゆっくりとマンホールのハシゴを登っていく。


最初にゾーブがいて、その後を3人のノワールがついていく。ジンたち3人は最後尾についていった。


「お父さん、飛んでるあのヘリコプターに乗って逃げればいいんだよね?」


「ああ、そうだぞ。レンとお父さんとお母さん、3人で行こうか」


「そうね。レンくん。魔法少女ソーサレスに殺されないように全速力で逃げましょう!」


レンというらしいノワールの少年は、両親であるらしい成人の男女と共に、マリシャス・シティ行きのヘリコプターが見える方向に向かっていく。


「……救助対象のノワール3人がそちらに向かった。ハシゴを下ろすように」


『了解した。おそらくそちらに魔法少女ソーサレスが向かってくるだろうから応戦を頼む』


エヴァンはヘリコプターのドアを再び開け、そこからハシゴを垂らす。そのハシゴはちゃんと地まで届いているだろうが、それでもかなり距離があるのが見て取れる。


しばらくすると、上空を飛んでいる3人の魔法少女のうち、1人がヘリコプターの方に向かう。残りの2人はこちらに降りてきた。


「ねぇ、魔法少女ソーサレスが分裂したけどどうすればいい?」


「……僕があっちに向かった魔法少女ソーサレスの担当をする。……君たちは降りてきた2人の担当をして」


ゾーブがそう言ったので、ジンたち3人はそれを受け入れる。そして、急降下してきた魔法少女ソーサレスの方を見る。


片方は片目を隠してメガネをかけた、青い瞳と髪の魔法少女ソーサレス。もう片方は銀髪赤目で左右非対称な髪型をした魔法少女ソーサレスである。型には両方とも小さい動物を載せている。


「ヴィランが刺客を差し向けてきたね」


「戦うしかないでしょ、こんなの。魔族と怪人族と……後もう1人は何?まあノワールじゃないっぽいけど」


「なんだったとしても戦うべきでしょ。とりあえず杖を向けて」


そうして、魔法少女ソーサレス2人とジンたち3人の戦いが始まった。


————


「……3人があの2人の相手をしている」

「……僕はノワールの家族を守らなきゃ」


赤髪に碧眼の、顔に傷を負った魔法少女ソーサレスが降りてくる。可愛らしい笑顔を浮かべていたが、それでもゾーブは警戒を怠らなかった。


「初めまして!私はモモカ、今日も魔法少女ソーサレスをやってます。君はここをたまたま通った一般人?」


「……そんな嘘はつきたくないね。……僕はアンドロメダ人だ」


「そっか。ノワールじゃないのはアレだけど、ヴィランだから倒さないといけないね。できるだけ痛くしないから許して」


そういうと、モモカはステッキをこちらに向けてくる。


「もう、モモカったら。直接聞かなくてもハムミンの鼻なら相手が何の種族かわかるハム!だから聞かなくていいハム」


「ああ、そうだったね……ハムミン」


「……そいつがピュアリーか」


モモカはステッキを向けると、ステッキの先に蝋燭のような火がつく。その火は弾丸のように形を変えながら、ゾーブの方に飛んでくる。


烈火弾フレイム・バレット!」


(……火の能力?強そうだね。……でも……相手が悪い)


ゾーブは手を左右に広げる。するとその間に黒い球体のような何かが生じた。モモカの放った炎の弾丸は黒い球体の中に吸い込まれて消えていった。


「何が起こったの?」


ゾーブの能力は『エネルギーの吸収』。熱や電気、光など、さまざまな種類のエネルギーを吸収することができ、また、それをビームのように放つことも可能である。ただし、実弾や近接武器、その他物質的な兵器に対しては効果がない。


(……危なかった。……これで炎じゃなく棘とかを飛ばしてきたら避けるしかなかったよ)


心の中でそう思った直後に、ゾーブは右手の人差し指でピュアリーを指差す。


「……角度はこのくらいでいいかな」


ゾーブが2〜3秒かけて角度の微調整をした後、突き立てた指から光線を射出する。光線にあたったハムミンはギリギリ避けられずに羽が焼け焦げ、そのまま抜け落ちてしまった。


「やばいハム!今のビームを避けきれなくて羽がなくなっちゃったハム!これじゃ飛べなくてどうしようもないハムよ〜!」


「落ち着いて、ハムミン!とりあえずこのアンドロメダ人を後回しにして、まずはあのノワール3人を殺さないと!」


「確かにそれはそうハムね。いくハムよ〜!」


そう言ってモモカとハムミンがノワールのいる方向へ向かっていった。しかし、ノワールたちに誤って当たらないよう歩きながら角度と位置を調節して放ったゾーブのビームに、ハムミンは再び直撃。今度はハムミンが丸焼きのようになり、そのままあえなく死亡した。


「……とりあえずこれで魔力供給は切れたね」


「嘘……嘘、嘘よ!ハムミンが死ぬなんて。ハムミンが死んだら……私は魔法が使えないじゃない!どうやって帰ればいいの?どうやって戦えばいいの?」


「……諦めろ。……そして死ね。……まあ、何かとは言わないけど相性が悪かったらこうなるんだよ」


そう言ってモモカに向けてレーザーを放つ。額に10センチ大ほどの穴が空き、モモカはそのまま地面に倒れ伏した。


「……よし。ジンたちのところに行くか」


そのままモモカの死体を放っておき、彼は無情にも3人の方に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る