第4話笑顔の連鎖

「昨日明君なんの話してたの?」

放課後の今、私は泉ちゃんに聞いた。


「気になりますか?」

前を見据えて、彼女が言う。


おかしい。いつもなら、私を見まくる癖に。



「いや…そりゃ…まぁ。」

泉ちゃんの様子が変だから、と喉まででかかった。けど飲み込んだ。


それは嘘だと思ったからだ。そんなの…気持ちは少しはあるけど。やっぱり明君がなんて言ったか気になる。



「でも学校では話せないです。」

泉ちゃんが俯いて言う。


「そうかー。んじゃ家に来る?」

私は家に誘った。けど彼女は首を横に振る。


「弟さんいますよね? あんまり聞かせたくはないので。」


どう言うこと? そんな…くっ、気になる。


「じゃあ〜どこにするん?」

実際そんな話せる場所あるか?


「漫喫にしませんか? それか映画館。私としては、映画館が良いですけど。」


…映画館ねぇ? デートしたいだけじゃ? まぁ〜、ここは彼女の意見を優先させて話を聞かねば。


「おけおけ、映画館で良いよ。いつにしよっか?  

泉ちゃんがいいなら、いつでも。」

両手を振って提案した。


「今日と言いたいところですけど、明日に出来ますか? 紬ちゃんの予定に合わせます。」



「じゃあ明日で。」

私は言い切った。早く知りたくてうずうずする。


その時、泉ちゃんの背後から、明君が私達の所に近づいてきた。そして立ち止まって、深呼吸をしていた。



「なぁ泉今日、一緒に帰らないか?」

明君が、照れ臭そうに言う。


「うん、帰ろっか。じゃあね、つ・む・ぎ・ちゃん。」


私は驚きのあまり一瞬の沈黙をして、じゃあねと返事をした。


「紬またな! これからよろしく、泉の事も頼むよ。」

仲良さそうに2人が私の前から去っていく。


「ああ…うん。またね。」

小声で震えながら言った。


そして次の日、泉ちゃんと待ち合わせだ。

すでに彼女は来ていた。はやっ。30分前に私来たのに…この子は。


「今日はよろしくお願いします。」

泉ちゃんが頭を下げて言う。


くっ…可愛い…キラキラしている。アイドルの様だ。可憐で、天使の様な愛くるしさ。


まさに美少女…お姫様かよっ。私が隣にいるの、完全に引き立て役ぅ。


それにしても…やっぱり私のこと好きで、見てもらいたくて、頑張ってメイクとかしたのかな? 一応褒めてやるか。


「今日の泉ちゃんは、めっちゃ可愛いね。アイドルかと思った。私とは、月とスッポンだね。私は、たいしたことないし。」

若干自虐気味に言った。それぐらい今日の彼女は、応援したくなるほど、魅力的。



「ううん、紬ちゃんのが可愛いから。可愛すぎて、胸がドキドキしちゃうよ。本当…紬ちゃんは、女神様も真っ青な、嫉妬するぐらい可愛い。」


いや、あんた褒めすぎ。恋が幻を見せてるのかな? くっそ恥ずかしいからやめれ。


映画は、ラブロマンスではなくて、アニメ映画。流石に泉ちゃんとは、キツいもんね。泉ちゃんちょい怖いもん。言ってることがね、うん。


このアニメにしよう。事前にどの映画見るか決めてなかったけど、彼女は特に何も言わずに頷いた。


さてと映画席に座って、始まるのを待った。

映画を観た後に質問だ。


「あっ、紬ちゃん…私…私。」


「どうしたの? 泉ちゃん、何か深い話になる?」

私は心配して彼女に歩み寄った。


「ううん…靴逆に履いてた。」


おまえっ〜ドジ過ぎやろ。思わず吹き出した私に釣られて、泉ちゃんも笑った。

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