紬ちゃんの青春日記

タカユキ

第1話バレンタイン

今日はバレンタイン…好きなあの人に本命チョコを渡さなきゃ。


中学2年…一年から好きな明君に手渡しするんだ。

手に持った少し大きめの箱に少し赤みがかったリボンが、可愛く付けられている。


うぉっしー。気合い入れていくぞー。

おしおし。やったる。


私の胸がドキドキとホットが暖かくなる。顔は、湯気が出るのではないかと思うぐらい暑くて、目眩すら起きるのではないかと、心配になる。


放課後に立ち上がって彼の近くに行く。

はぁはぁ。

「明くん、これ。」


「これ?」


チョコ…チョコだから、チョコなんだ!


「ああ、ありがとう。」

私から彼がチョコを受け取る。やったー。渡せた。ひゃっほー。


彼の表情を見る。が…すぐに彼は自分の椅子に座って欠伸をした。


…ひーん。それだけかよ! なんか言えよ。


頭の中で明君を引っ叩く。


うぉーい。それ手作りだぞ? 本命チョコだぞ!


私は自分の席に魂が抜けたかの様に戻った。


はぁ〜こりゃ、脈なしだわ。ああー、冷たい反応。クールで、たまに優しい彼のギャップに惚れてしまったけど、クール過ぎるのもキツい。


さて帰ろう。帰って失恋ソングでも聴くか。

立ち上がって、帰る準備をし始めた。


「ねぇ、紬ちゃん。これ、私からのチョコ良かった食べて。」

友達の泉ちゃんが、照れながらチョコを突き出した。


ぐっはー。いてぇ。泉ちゃんの突き出した箱がダイレクトに私のお腹に直撃した。


この子、めっちゃ天然なんだよね。あいたたっ。


「あー、ごめんなさい…紬ちゃん。大丈夫? そんなつもりじゃなかった。」

トレイで紙がなかったかの様に絶望した表情で泉ちゃんが、屈んで私に言う。


「大丈夫、ふぅ。ありがとうね、チョコ。」

泉ちゃんからチョコを貰った。


帰り道泉ちゃんと一緒なのよね。一緒に帰ろうと泉ちゃんが提案し、帰りながら泉ちゃんが私の顔をチラチラと見る。


「泉ちゃん、危ない。」

電柱にぶつかる彼女。


「はぁう。」

顔をさすって彼女が舌を出す。


「全くよそ見するから。」


「へへへ。ごめん」

相変わらずだな。


しばらく歩き泉ちゃんとお別れして、自宅に戻った私は、自分の部屋で明君とのこれからを妄想した。


妄想が終わり腹が減ったので泉ちゃんから貰った箱を開けた。大きい手作り? のチョコと、手紙があった。


読んでみよう。


「紬ちゃん、いつも遊んでくれてありがと。私紬ちゃんが大好きです。よし良かったら、私とど付き合って下さい。」


ど付き合う? へっ? これって告白か?


「いやー。ごめん泉ちゃん無理だわそれは。」


チョコを恐る恐る食べた。美味しい。チョコが塩辛いんじゃないかと、不安だったが、結構イケる。


その時LINが来た。画面を開くと、明くんからだった。


「チョコありがとうな。紬ホワイトデー楽しみにしてな!」

うぉー、奇跡の逆転勝利! こいつ…明こいつ、ツンデレかよ!


私はLINの返事をして、スマホの画面を閉じて、部屋でダンスをしまくった。


「姉ちゃん、何踊ってんの?」


弟が部屋をノックもせずに開けてきた。


「このやろー、勝手に部屋開けるな!」


「彼氏でも出来たん?」


「小学生の癖にそんなこと言うな。自分の部屋戻って勉強してな。」


「うん、僕チョコめっちゃ貰った! 自慢したくて来た。」


「クソが! そりゃ良かったね。」

少し褒めて、弟退けた。やれやれ部屋に鍵を付けてもらんとプライバシーがない!


私は、喜びもそこそこに宿題を始めるため机に向かった。



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