92 歌姫

 歌を忘れた歌姫は、銀色の船に縛り付けられて月夜の度に海の上に浮かべられる。月明かりの下、歌姫は荒波で船が転覆しないか怯えて過ごす。


「何故歌えるようにならない」

「まったく大損だ」


 歌は忘れたのではない。無くした歌は波の間に間に消えていく。

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