剣と魔法の世界で、冒険王になる‼

kenken

第1話 目覚め~序章~


 目を覚ますとそこは太古たいこの世界が広がっていた。

 どこまでも続く樹林。そこには太古からの生物たちがうごめき、見たことのない動植物たちが自生じせいしていた。

 ここは何処? ケントは天を仰いだ。最後の記憶にあるのは、まっさらな光。それと、何者かの影だった。影は言っていた。「最初に出会ったものを信じよ。その者がお前の手助けをしてくれるだろう」

 ケントは混乱していた。思い出せるのはそれだけだった。自分が誰なのか、どこから来たのかすら思い出せない。覚えているのは名前だけだった……。

「し、しずかに!」少女は言った。

 ケントは少女に尋ねた。「きみは誰?」

「と、とにかく黙って」

 茂みから、男が現れた。ぼろのマントを羽織いる。

「その女から離れて」男は言った。

 ケントは困惑して立ち尽くした。

「その女は危険な女だよ。だから、一緒にいない方が良いよ」男は、けらけら笑った。

 ケントは状況が飲み込めなくて動けなかった。

「わたしを信じてください?」女は言った。

 ケントは、あの言葉を思い出した。『最初に出会ったものを信じよ。その者がお前を手助けをしてくれるだろ』。「うん。きみを信じるよ」

「なら走って」

 見ず知らずの少女と、樹林の中を走り出した。

 背後から、男が言った。「危険だよ。その女はきみをだまそうとしているんだ!」

 首をふった。「お前の言葉なんか信じない!」

 やがて、二人は岩場に追い詰められた。

「もう、手間かけさせやがって」男は言った。「その女はね。犯罪者なんだ。君と同じ年齢に見えて、顔も幼くて、若く見えるけど、人を十人ほどあやめているんだ」

 ケントは突然の申し出に驚いた。

「本当なの?」

「ああ、本当さ」男は肩をすくめた。「信じれない?」

 少女は言った。「嘘です。彼は、嘘つきです。彼の言葉を信じないで下さい」

 ケント混乱した。一体どちらを信じればいいのか。

 男は一歩前に出た。「証拠を見せるよ」

 男はゆっくりと、少女を指差した。

「何?」ケントは首を傾げた。

「その女の持っているものみなよ!」

 抱えているものを見た。不思議な包みを持っている。こぶし大ほどの大きさで、何かが包まれている。

「それ何かわかる?」男は言った。

 ケントは首をふった。

「彼女が持っているのは、とっても貴重な原石さ。魔法石ともいう。それは非常に価値があるものでね。それを使うと、魔法が使えるんだ」

「魔法?」

「そうさ」男は頷いた。「この世界では、魔法は誰でも使える。たいていは産まれ持っていた力を開花したり、成長していくと自然と使えるようになるんだ。だけど、それだけじゃどうにもならない、強大な魔法が存在するんだ」

「魔法があるの!?」

 男はにやりと笑った。「どうやったら、そのとてつもない魔法が使えると思う?」

 ケントは首をふった。

「答えはね、その少女が持っているものを使うんだ」

「そうなんだ……」

「とても価値のあるものだよ」

 ケントは少女を見た。

「私は知りません。私は、人を殺していませんし、奪ってもいません」

「なぜ逃げるのかな?」男は言った。

「あなたが悪いことを企んでいるからです」

「石は何処から手に入れたの?」男はにやりと笑った。「奪って、逃げたからだろ」

 少女は首をふった。「託されたんです。これは、仲間から受け取ったものなんです」

 ケントは男の言葉を信じるべきか、少女を守るべきなのか分からないでいた。男は、大きな吐息をらすと、腕を前にかかげた。次の瞬間、男の手から炎が飛び出し、少女の服を焦がした。「あまり、聞き分けがないとお仕置きだよ」

 男は、脅すように少女に向かって炎で攻撃した。炎は少女からそれていたが、近くにあった岩を焦がして焼いた。

「そろそろ決めてくれるかな? 僕にその石を手渡すか、それとも焼き殺されるのか?」

 ケントは瞬間的に判断した。どちらかが悪人だというのなら、少女を脅かして、脅迫きょうはくするような人間が正義のはずない。ケントは、少女の手を取って走り出した。背後にあった岩場の隙間すきまをすり抜けた。

「へぇ、僕に抵抗するのか」男は肩をすくめた。

 ケントは少女の手を引いて密林の中を走り出した。森は深かった。巨大ない木々がそびえ立ち、足もとには自然のまま伸びた草たちが行く手をはばんだ。

「信じてくれてありがとうございます」少女は言った。

「正直ぼくにもよく分からないよ。だけど、あの男の言うことは信用できない。そう思っただけさ」

「はい」少女は頷いた。「わたしはユナです」

「僕はケント。よろしくね」

 二人は握手した。

「これからどうしましょう」サナは言った。

「あの男から逃げなくちゃ。あの男はきみを脅していたし、捕まったらきっとひどい目に合う!」

「ですね」

 ケントは背後を振り返った。密林の奥から男の声が響き渡った。

「逃げようなどとは生意気な!」

 男は空中に浮かび上がると、腕を大地に向かって突き出した。次の瞬間、腕から業火の炎を飛び出し、森に火を放った。その炎は灼熱しゃくねつの炎だった。燃えきるまで、決して消えることのない炎だった。

「嘘だろ」ケントは立ち止まった。「僕たちを殺す気なの!?」

「きっと、そのつもりです。あの男は、危険な人間です」ユナは言った。「さっき、人を殺したと私のせいにしていましたが、この包みを奪うために、十数人の命を奪ったのは彼なんです」

 ケントは衝撃を受けた。「悪い奴だ!」

 少女は頷いた。

 ケントは思い出した。ここに辿り着い瞬間思い出した言葉があった。『最初に出会ったものを信じよ。その者がお前の手助けをしてくれるだろう』。この言葉を信じてて良かった。

 ケントは、自分が何故なぜこの地にいるのか。なぜ、自分がこのような事態に巻き込まれているのか分かっていなかった。

 だが、はっきりと理解した。この少女を信じる事が正解につながる。

 この少女とは今後、長い付き合いになりそうだと感じていた。

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