Heavenly prison ──《天の牢獄に歪められた運命を切り開く者》──
ハクアイル
偽物の世界と大罪人
プロローグ 【改稿・推敲済み】
そこには、広がっていた。
──数千もの命が、互いを否定するために集められた光景が。
ホーヘヴは、その全てを遠くから眺めていた。
草原も、森も、巨岩も。
それらはただの舞台装置でしかない、と。
その中で、人間達は男女構いなく、お互いの信念や存在を認めさせる為に命を賭していた。
飛び交う怒号、轟音や爆風が周囲を支配し、次々と命の火が消えている。
金属音は止むことなく響き、光と熱を発する爆発音はその場の命を焼き尽くした。
一部の戦場内では、晴天から氷の矢が降り注いでいる。
血の海が作り上げられると、それを糧とし魔獣を召喚しては
この星アスラディアには、特殊能力を行使する為に必要な【
しかし、恩恵は地底までは十分には行き渡らない。
【
その上で、これまでまともに受けられなかった分の恩恵も上乗せして利用させてもらうと主張したのだ。
だが、天種は地種の破綻を招きかねない考えに異を唱えた。
『生成には限界がある』
天種はそう信じていた。
だが地種にとって、それは奪われ続ける側に都合のいい理屈でしかなかった。
その為、天種は〈生成サイクル〉を考えた、使用制限を設けた上での使用を訴えた。
しかし、受け入れられず対立が続き、この大戦が引き起こされたのである。
「
「奢りが過ぎるぞ
「地種よ! お前達の考えはガイアの崩壊を招いてしまう!! そんな事は到底受け入れらない!!」
「言葉には興味がない!! 奪い! 権利を勝ち取るだけだ!!」
言葉の応酬も止む事なく、戦いは加速度を増していく。
互いに一歩も引くことはなく、死者がどんどん増えていく。戦いの終結も見えず、ただ殺し合いが続いていた。
そうした中、地種側の拠点では不穏な動きが見え始めていた。
拠点に設営された建物の中では、この大戦の指揮を任されている、地種に属する
その中でも上位者だろう、20代後半と思われる色黒の男、──体躯のいい白髪の老人、──そして、長身で腰まで金髪を伸ばした女の3人が口を開いた。
「例の作戦はどうなっている?」
その言葉に、部屋の空気が一瞬だけ重くなった。
「ちゃんと出来ておるのじゃろうのぉ? 失敗などと言うなよ」
「念入りに進めてきたのよ……失敗するわけないわ。ねぇ、リーダー?」
その言葉を向けられたのは、20代半ば程の男であった。
漆黒の髪を肩まで伸ばし、一番奥の椅子に腰を掛けていた。
その状態であっても体型の良さもさることながら、2メートル前後と思われる身長も判った。
「さぁ、どうだろうな……。俺はただこの『無駄な戦い』を見届けるだけだ。ふふふ……」
男は静かに返すとそれ以上の言葉を発しなかった。
そこに、1人の男が簡易的に造られたドアを勢いよく開け、大きな声と一緒に入って来た。
「伝令!! 大変です!! 天種側にあの
「「「!!!」」」
その報告を聞いた地種達は驚愕の表情を浮かべていた。何故なら先程まで作戦の失敗を危惧していたからである。
「貴様!
テーブルを叩きつけ、そう口火を切ったのは先程から計画の失敗を口にしていた白髪の老人だ。
「これじゃ失敗じゃない!! どうするつもりなの!?」
「ヴェルネットの言う通りだ。やはりお前をリーダーにするのではなかった……ガルダ殿を置くべきだったのだ」
「ほんとそうよのぉ、ワシがやるべきであったわ! 主は見る目があるのぉキリガよ」
各々がリーダーの男を否定する言葉を口にし始め、責任を取るべきだと声が上がっている。
だが、その当人は先程と変わらず騒めきを見つめているだけであった。
そして、静かに立ち上がり、口元に笑みを浮かべると否定の言葉を気にも止めず、再び、そのままゆっくりと外へと歩みを進めた。
この状況の中であり、好き勝手な言葉を口にしていた者達は、男の表情の変化に誰一人として気付く者は居なかったのだ。
──天種側、数分前。
「朗報です!!
そう大声で天幕を開け入ってきた若い男はその場に集まる5、6名の天種の代表達の視線を奪った。
「そうか!!
真っ先に口を開いたのは、総指揮官であろうと思われる恰幅のいい白髪混じりの中年の男であった。
「はい! 只今こちらに来られます!」
その言葉を聞いた天種達は自分たちの勝利を確信したかの様であった。
何故なら、悪夢一族は空間操作を得意し、天種最強と位置づけられる存在なのである。
すると間もなくして、黒色のローブを纏った5名が入ってきた。
先頭のリーダーらしき男がゆっくり歩みを進め、静かに口を開いた。
「お待たせいたしました。この『無駄な戦い』を終わらせましょう……」
その言葉に天種側の代表達は安堵の表情を浮かべ、総指揮官であろう男が口を開いた。
「これで戦いに終止符を打つことが出来るのだな。地種達には悪いが、ガイアを守るためだ」
「指揮官殿よ、それは仕方のないことだ……。我らは提案はした……。それを蹴ったのは奴らだ! あのやり方では間違いなくガイアの崩壊をきたしてしまう。ここで止めなければ後々、世界に多大な影響を与えることになる」
「……そうだな。ここで、止めねばな……。すまないが、コルトス殿あなた方の力でこの戦いを終わりにしてくれ」
そう言われた
そして──融合真創能力、《真能》の構成を一斉に編み始めた。
その構成が成功すると──『
死闘真っただ中の戦場全体に無数の黒い
戦場にいる者達はその異常な光景に手を止め、『何だこれは?』『気を緩めるな!』『何か来るぞ!』など様々な声が騒めきとなって覆っていた。
だが──次の瞬間……本当に一瞬だった。
巨大な破砕音と同時に激しい空振動が起こり、それまでの騒めきが嘘だったかのような静寂が一帯を支配した。
先程まで戦場であった場所に残されたのは、空間と共に切り裂かれた屍が辺りを埋め尽くし、ごく僅かに残された生存者は目の前で起きた現象に理解が追いつかず、ただただ茫然と立ち尽くしていた。
この一瞬により大戦は突如として幕を閉じたのであった。
その光景を空中から見下ろしていた漆黒の髪を持つ男、ホーヘヴ・グラーディアは口元に笑みを浮かべ静かに言葉を発した。
「フッフッフッ……予定通りだ」
※ ※ ※
天地大戦から二千年、勝利を収めた
──二千年後、人々はそれを「必要な隔離」と呼んでいた。
なぜ地底を封じたのか。
誰が決めたのか。
それを疑う者は、もうほとんど残っていない。
世界は
その運命も世界の
真実を知れば捻じ曲げられた世界の闇が顔を出す。
この事は、『知られてはいけないもの』であり、『知った者、知る者』は消さなければならない。
当然その原因になり得る元凶も……。
大多数の人々は、今あるものが真実だと疑いもせず世界に従い続けていた。
ある日を境に、ある出来事をきっかけに──
世界の
──この歪んだ世界が生み出した
──事実とかけ離れた運命を創り出す悪意
──欲望が渦巻く言葉
──世界を……人々を騙し続ける表現──
──大罪人──
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