第103話 新人魔女と突然の婚約者(7)
「そ、そんな……」
リッカがなおも戸惑っていると、グリムはやれやれと肩をすくめた。
「あんたはまだ若いんや。好きにやったらええ。難しいことは、周りの大人たちが勝手にええように考えるやろ。それに、リゼラルブがええと言うとんねん。なんの心配もあらへん」
「でも、エルナさんは……」
リッカの言葉にグリムは退屈そうにふぁと欠伸をした。
「エルナ・オルソイのことはよう分からんけど、まぁ、ええんやないか? そもそもあいつは、マリアンヌのところの侍従や。それこそあんたの力ではどうする事も出来んのやから」
グリムの言葉に、リッカは苦笑する。そして、大きくため息をついた。
「そうかもしれません……でも……」
迷うリッカにグリムは鋭い視線を送る。
「なぁ、あんたはこれからどう生きたいねん?」
真っ直ぐに見つめてくる翡翠の瞳がギラリと光る。その強い瞳に気圧されて、リッカは思わず口ごもる。
「これからの……わたし……」
リッカは俯いて考えた。そして、意を決したように顔を上げる。
「わたしは、もっと色々学びたいです! それで、いずれはリゼさんの様な立派な賢者になりたいんです!」
「なら、答えは出とるんとちゃうか」
リッカの出した答えに興味なさそうに答えたグリムは、尻尾をゆらゆらと左右に振りながら、リッカのそばを離れていく。その背中に向かってリッカは慌てて声をかけた。
「あのっ! グリムさん」
リッカの呼び声にグリムはチラリと振り返る。
「お話を聞いてくださり、ありがとうございました」
リッカが勢いよく頭を下げると、グリムは困ったようにニヤリと笑った。そして、再び尻尾をゆらゆらさせながら去っていった。
リッカはしばらく立ち尽くしたまま思いにふけっていたが、やがてパンッと頰を両手で叩いて気合いを入れる。
(うん! もう決めた!)
リッカは一人大きく頷くと食堂に戻っていった。そして食堂に戻るなり、勢いよく告げる。
「わたし、リゼさんと結婚しますっ!」
いきなりのリッカの宣言にリゼとエルナはポカンと口を開けている。そんな二人を気にも留めずに、リッカは再度宣言する。
「わたし、リゼさんとの政略結婚でこの工房に残ります! それがわたしの幸せですっ!」
「……そうか。それで良いんだな?」
リッカの勢いに面食らいつつも声をかけるリゼに、リッカは真剣な表情で向き合った。
「はい……わたしはまだ子供で、大人の事情はよく分かりません。だから、自分のわがままを通すことにしました」
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