第2話 新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!(2)
突然大きな声を出した彼に驚いていると、大男は満面の笑みを浮かべながら言った。
「俺は、この就労斡旋所『プレースメントセンター』の所長、ジャックス・ランバートだ。俺が嬢ちゃんにピッタリの工房を探してやるよ。さぁ、座った座った」
「はぁ……」
言われるままに椅子に腰かけると、目の前にコーヒーが置かれる。
「それで? 嬢ちゃんはどんな仕事を探しているんだ? ライセンスは魔法協会発行のようだったが、やっぱり魔女の工房見習いとか?」
そう言って、ジャックスはリッカの向かいの席にどかっと腰かけた。リッカは、出されたコーヒーを一口すする。そして、少し考えてから答えた。
「はい。そうなんです。ですが、街での仕事しか見つからなくて……」
「街の工房じゃダメなのか?」
「できれば、森の中の工房を希望しています。あの……本来、魔女ってそういうものだと思うので」
「それはそうかもしれんが、今時はみんな街へ出てきてるぞ? それに山には魔獣がいる。職場にするには、危ないんじゃないか?」
「う~ん……でも、魔獣くらいならなんとかなりますし」
リッカが言うと、ジャックスが驚いたような顔になる。
「ほぉ……そりゃ頼もしいな。だが、嬢ちゃんは魔女なんだろ? 魔獣と戦えるのか?」
ジャックスの問いかけに、リッカは微笑みながら答える。
「わたし、こう見えても結構強いんですよ?」
「ほう? そいつはすごいな。一体何ができるんだ?」
「一応、戦闘系魔法と治癒系の魔法は一通り使えるつもりですが……」
「…………」
リッカの言葉に、ジャックスが固まった。
「……嬢ちゃん、本当に魔女か?」
「はい。一応……」
「いやしかし、いくらなんでも……」
「あっ! もしかして疑ってますねっ!? 本当ですよ?」
リッカはムッとした表情で言うと、懐から証書を取り出して机に叩きつけるように広げた。
「これ、さっきも見せた卒業証明書です! わたしはアルケミー出身なので、素材採取に必要な技術はそれなりに身につけています!」
「ふむ……『アルケミー・アカデミー』ね……。こりゃ珍しい。しかも結構いい成績じゃねぇか」
「あ……ありがとうございます」
リッカは褒められて照れくさくなり、頬をかいた。
「ですが、わたしはまだまだ未熟なので、森の中での実習をもっと積みたいのです。そして、ゆくゆくはなんでも錬成出来る立派な魔女になりたいのです。それに……この街では、なかなか私の希望する工房が見つからなかったものですから」
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