エッセイをあつめたもの

ゆきのともしび

Birth 28


28歳になった


誕生日だからといって 特別なことはしない


恐ろしく静かに 刃物で肉を叩くかのように

ときが過ぎていくだけだ



ついこの間までの 私にとってのときは

ものすごく断片的で

一日一日が

瞬間を寄せ集めのような


それはまるで

街頭アンケートで貼り集められた

小さな丸いシールのような

そんなものだった


それがあるときから 一本の路になった



昨日の私も 今日の私も

明日も 私なのだ



私はわたしから 決して逃げることはできない



それを考えると

くらくらと眩暈がする


おそろしい


うれしい


かなしい


いったいいつになったら 終着するのだろうか



息切れをして

とてつもない恐怖に見舞われたとき

どこに寝転がり

眠りについたらいいのだろうか




希望をもって生きることはできない

命を絶つことができないから

生きているだけなのかもしれない


しかし 例えば

いまこうしてここに記していることや

さっき クロスでそっとテーブルを拭いたこと


その行為は

生きようとする 心の奥のともしびから

来ているのかもしれない



わたしはそのちいさなともしびを

目を凝らして

手をあてて


感じ取ることしかできないのだ






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