独身男の一人旅 松山に行ってみた

@8388618b

第1話 1日目 旅立ち

午前7時45分、羽田空港。

この場所にはいつ来てもテンションが上がる。


搭乗予定のANA松山行きは、午前9時25分に出発の予定。

朝食は空港でと決めていたので、まずは第2ターミナルの3階テラスレストラン街へ。

目をつけていた創作茶漬けの店『こめらく 贅沢な、お茶漬け日和』を訪問する。


店内は金曜日の朝にもかかわらずほぼ満席。

レジの隣にはスーツケースがずらりと並んでいる。

店が狭く邪魔になるため、大きな荷物は入り口で預けるルールのようだ。

こういう時は、手提げかばん一つで済む男の一人旅は気楽でよい。


注文したのは『しらすたっぷり 海鮮ぶっかけごはん』

客が多いにもかかわらず料理が出て来るのは意外と早い、さすがは空港の店。

丼はやや小ぶりだが、しらす、いくら、まぐろ、サーモン、小柱がたっぷりと乗っていて具は豪華。

このまま海鮮丼として食べても美味そうだ。


「最初に半分を丼として食べ、残る半分はかつおだしを注いでお茶漬けにして食べてください」


それが店の薦める食べ方であると、店員さんに説明される。

しかし隣でお茶漬けをすする客から漂うかつおだしの誘惑に負け、3割ほど海鮮丼を食べた所でお茶漬けにチェンジ。

ご飯と海鮮に濃厚なかつおだしが合わさると、たまらない美味さだ。

スプーンを動かす手が止まらない。

付け合わせのポテトサラダときんぴらもあっという間に平らげ、腹も満足。

会計はいくら増量分も含めて税込み1990円。

空港でこのクオリティなら納得の値段だ。


腹ごしらえを済ませた後は、スマホでチェックインをして保安検査場へ。

別にやましい所は何一つないのだが、金属探知機ゲートをくぐる時はいつも緊張する。

まだ寒さが堪える時期のため、厚手のコートを着ている方は脱いだり着たりが大変そうに見えた。


飛行機の出発にはまだ1時間あり、搭乗ロビーで暇を持て余す。

最初は『カフェねんりん家』に行き、好物のバームクーヘンとコーヒーをいただこうと考えた。

しかし朝食をガッツリいったせいで、どうも甘いものを食べる気にはならない。

仕方なく搭乗ゲート前のベンチに座り、買ったまま積んでいた電子書籍で時間を潰す。

読み始めたのは、小野寺拓也著、田野大輔著『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』という本。

経済政策や福祉政策など、SNSや一般書で見かけるナチスの功績とされる主張について、2人のドイツ人研究家が批判的な視点で解説していくものだ。


半分ほど読んだところで登場搭乗手続きのアナウンス。

ドベの第五グループのため最後まで待たされる。

一度くらいはプレミアムクラスで搭乗し、先に機内へ入る優越感を味わいたいものだが、せいぜい2~3時間の快適と引き換えに万の追加料金を払うのは抵抗があり、未だ実行に移したことは無い。


待たされた末にようやく機内へ。

3列シートの通路側に座り、離陸するのを待つ。

平日だが金曜日ということもあり、松山行はほぼ満席。

観光客も多く、隣に座っているのは親子連れだ。


離陸まで座席シートのモニターをいじって時間を潰す。

視聴できる映画の中に、気になっていた『クレヨンしんちゃんthe movie 超能力大決戦』を見つけた。

しかしいい大人がこの衆人の中でアニメを観る勇気はさすがになく、映画は諦める。


モニター付きシートの飛行機に乗るのはこれで2度目だ。

1度目は運悪くモニターが故障した座席に当たってしまったが、今回はその鬱憤を晴らすよう遊び尽くす。


そうこうしている内に、モニターにアナウンス中のテロップが現れる。

滑走路の順番待ちを終えた飛行機が加速し、いよいよ離陸を開始した。

飛行機が地面を離れると、足元に浮遊感が伝わってくる。

この瞬間はなぜか心地よい。


モニターを見ると、羽田から松山までの飛行時間は1時間5分とある。

設定を変えると飛行機がどこを飛んでいるのか、高度はどの程度かなどを調べることができて面白い。


飛行が安定すると飲み物のサービスが始まる。

コーヒー、コンソメスープ、アップルジュース、コーラ、日本茶、ミネラルウォーターからの選択だ。

ただし子連れ客に対しては、暖かい飲み物は提供できないとのこと。

火傷防止のためとはいえ、航空会社も何かと気を使って大変である。

自分は冷たいお茶をいただきました。


その後は『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』の続きを読んで時間を潰す。

ナチスの経済政策については、YouTubeでも多数の解説動画が上がっていて、もはや手垢がついた話題だ。

しかし福利厚生や環境保護、健康政策にまで切り込んでいるものは、なかなかお目にかかれない。

ページ数こそ少なめだが内容は充実しており、歴史好きの知識欲を満足させるには十分な一冊だ。


飛行機は終始安定飛行で、定刻通りに目的地の松山空港へ到着。

パイロットの腕が良いのだろう、着陸も静かなものだ。


しかし飛行機から降りる際はスムーズに行かず、かなり待たされる羽目に。

機内にスーツケースや大きなリュックを持ち込んだ客が、荷物棚から取り出すのに苦戦しているせいだ。

こうなると後ろの席は辛い。

同時にプレミアムクラスの特別感を再認識させられる。

(いっぺんくらいは贅沢しても良いかな)

そう考えながら列に並んで外に出るのを待った。

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