第132話:お肉パーティー

「二頭も貰っていいのか?」

「なぁに、シーサーペント一頭で、町の住民全員が十分に食える量だからな。そもそも大精霊様の力がなけりゃ、あんな簡単に討伐なんかできやしねーんだ。まさか怪我人すらでねぇとは、驚いたぜ。それもこれも、お前らのおかげだしな」


 三頭のシーサーペントは、ものの十数分で倒された。

 こっそり俺もスキルを使おうかなぁとか思ってたけど、思ってる間に終わったっていうね。

 マリウスが言ってたけど、砂漠に生息するモンスターってのは、全体的に厄介・・なのが多いらしい。

 皮膚が硬いとか、魔術師の主力魔法である火属性に耐性があるとか、やたらタフだからとか。そんな理由で、駆け出しの冒険者じゃとてもじゃないが、歯が立たないだろうって。

 

 ここを拠点にする冒険者は、内陸の方だとかなり腕の立つ部類にはいるんじゃないかってのがマリウスの見解だ。


 そんな冒険者に引けを取らないルーシェとシェリルって、やっぱり強いんだなぁ。

 村の人たちも、主に男たちはたいていの人がモンスターを狩れる。


 あれ?

 砂漠の住民って、めちゃつよ民族だったりする?


「ユタカさん、さっそく村へ戻りましょう」

「新鮮なうち食べるとすっごく美味しいんだって」

『レタスヨリ美味シイ?』

「どうかしらね。食べてみればわかるんじゃない?」

『食ベルゥ~』


 アスは基本的には草食だけど、肉が食べられない訳じゃない。

 さて、今回は肉とレタスと、どっちが美味いって言うかな。


 しかし全長五十メートルで、太さ三メートルぐらい。この量はさすがに一度には食べきれないぞ。

 ハクトんところにもおすそ分けしよう。


「アス、おじちゃん呼んでくれるか?」

『ウン。オジチャーン。フレイオジチャーン』


 一分ほどでフレイが飛んでくる。

 なんで聞こえるんだろうな?


 何十本か丸太の予備を作業場に置いて、いったん村へ帰ることに。

 今ある木材で海岸に作業場と簡易宿を建てたら、本格的に港造りが始まる。

 既に建設作業員の募集も始まっているようだ。

 町は心なしか活気づいている気がする。


「フレイ。砂漠の村に行ってくれ」

『帰るのではないのか?』

「帰るんだけどさ、お土産があるからそれを置いてからだ。そうだ、フレイも肉って食べるんだろう?」

『もちろんだ。まぁ我ぐらいになれば、ごくたまに食事を摂るだけで足りるのだがな』


 体は大きいのに、食事はたまーにだけ。

 コスパ最強だよなぁ。


『それで、なんの肉だ?』

『シーサーノオ肉ダヨォ』

『シーサー??』

「アス、それ違う肉だから」


 この世界にシーサーがいるかどうかは置いといて。


「シーサーペントだ。美味いんだってさ」

『海の魔物か。食したことはないな』

「なら食べてみるか? 二頭もいるから、保存食にするにしてもめちゃくちゃ多いんだよ」

『ボクモ食ベルノォ』

『で、では我も一緒に食してみよう』


 アスと一緒に食べたいだけだよなぁ。


 砂漠の村に寄って、シーサーペントの小さい方を置いていく。

 リリの風魔法でぶつ切りにしてあるから、下処理もしやすいだろう。

 冒険者お勧めの香草の種を町で仕入れ、それを成長させまくって調理方法も伝えて渓谷へ。


「こりゃ凄い。これ一頭で一カ月は持つんじゃないか?」

「フレイにもご馳走するから、一カ月は持たないかな」


 インベントリからドーンっとシーサーペントの肉を取り出し、さっそく奥様方が保存用の作業に取り掛かった。

 ワンブロックは今夜のご馳走用に。

 そのワンブロックも、直径三メートル、厚み一メートルもある。


「リリ。この肉さ、これぐらいの厚みに切り分けられるか?」

『〇♪▽』

「いけるって」

「よし、じゃあ頼むよ」


 五センチの厚みに切り分けてもらう。

 直径三メートル、厚み五センチのステーキ肉が二十枚。

 それをみんなで食べる。


『ほぉ、いい色をした身だ』

「だな」

『焼くのであれば我も手伝ってやってもよいぞ』

「えー……焦がすんじゃないのか?」


 火竜の火だと、火力が強すぎてダメだろ?


『ふん。火力の調整ぐらいできるわ。それに、火で直接焼くのではないぞ』

「ん? どうやって焼くんだよ」

『ふっ。まぁ待っておれ。手ごろなモノを探してこよう』


 フレイはそう言って飛び立ち、三十分もしないうちに戻って来た。

 その手には平たい――といっても厚み五十センチはある――岩を持っていた。


 まかさ石焼き!?


 岩と空に向かって掲げると、そこにブレスを吐きかける。

 こっちに火は来てないのに、あっつっ。


『さぁ、この上に肉を置くのだ』

「ほんとに石焼きか。へぇ、よさそうだな」


 こびりつかないよう油を垂らして、巨大肉を数人がかりで持ち上げ岩の上に。

 ジュゥーっと音を立て、肉が焼けていく。

 香草焼き、塩胡椒だけ、てりやき風、生姜焼き風、ノーマルにただ焼いただけ。

 いくつか焼いてみた。

 一枚の半分はフレイに。残りは小さくカットして、個別にとって食べようという立食スタイル。

 チキンホーンたち用のものはさらに細かく刻んで、冷えたら持っていってやる。あいつらすっげー猫舌なんだよな。


「肉は行き届いたか~?」

「うーん」

「美味しそうぉ」


 確かに美味しそうだ。焼いただけのステーキは、冒険者に教わったレシピでルーシェがソースを何種類か作ってくれている。

 たっぷりの肉、サラダ、スープにパン。


「じゃ、いただきま~っす」

「「いただきま~す」」


 あむっ。

 ん、んん!


「うっまっ」

「本当ですね。お肉も柔らかくて、とっても食べやすいです」

「臭みがまったくないのね。ん~、おいひぃ~」

「アス、レタスとどっちがいいか? アス?」


 アスは一心不乱に食べていた。

 肉に目覚めたのか!?


 ん、あれ? レタス、持ってるよな?


『アスくん、お肉をレタスで巻いて食べてるぅ』

「レタスを?」


 あ、本当だ。

 葉っぱを一枚千切ったら、それに肉を乗せて食べてるな。

 焼肉屋さんとかだと、サンチェに肉を乗せて食べたりするけど、それと似たようなものなのかな?

 なんか美味しそうだから真似してみよう。


「アス、レタス一枚くれないか?」

『ヤッ』


 ……独占してやがる。仕方ないなぁ。

 種を一個取り出して成長させてから、肉を乗せて食べてみた。


「ん……お……いい感じ」

「美味しいの? 一枚ちょうだい」

「あ、私も一枚ください」


 ルーシェたちにもレタスを渡すと、彼女らも同じようにして食べた。


「あら、結構あいますね」

「ほんとだ。お肉のジューシーさを残しつつ、あっさりした味になるわね」


 サンチェと同じじゃん。

 でも口の中をリセットしてくれるし、美味しいし、レタスいいな。


「んメェ」

「バフォおじさん、それはヤギの鳴き真似のほうか?」

「いやいや、うめぇよこの肉。シーサーペントかぁ。おし、覚えておこう」


 覚えておこうって、覚えてどうするつもりだよおじさん!



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●●書籍版、発売中です!●●

スターツ出版グラストNOVELS様より発売されております。

続巻するかどうかは売り上げにかかっておりますので

もしよろしければお手に取っていただけるとありがたいです。

いくつかの書店&電子書店様では特典のSSもついております。

アスとバフォおじさんに焦点を当てたお話二本。

どっちがついて来るかはお楽しみ?

よろしくお願いしま~す。


料理の描写が苦手です。

私、料理するのが嫌いで、好き嫌いも多いせいか

食に対する執着心がまったくなくって・・・

美味しいもの食べたいなって思いはするんですが

じゃ、何が食べたい?ってなると、特になーんにもないっていう。

美味しそうに書くにはどうすればいいんだ・・・

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