夜光塗料

桃川 夕

留守番?

いいもんだ

ひとりで留守番って


誰も来なければ

もっといいもんだ


雪夜おそく

ふるぼけた木椅子にすわって

紅茶をふぅふぅしながら

ぜったいにもどらないひとを待つのは

やっぱり 

いいもんだ


ガウンの襟に頬までうずめて

じーじー云うストーヴの芯の赤身

指先去っていくカップの肌の温み

苺ジャムに粘った唇のとろみ


いいもんだ

ほんとに


見上げた天井がゆらぐのは

いつのまにかふくらんだ


涙のせい

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