第36話 クエスト受けて、集うオカリナ
受付嬢さんの反対を押し切り、大ミミズ討伐のクエストを受注してきた私たち。
受付嬢さんは私たちの浅い冒険歴を知っていらっしゃるため、最後まで親身に心配してアドバイスを残してくださいました。
1つ。クエストの受注期間は1週間。
クエストが誰かに受注されている間、他のパーティはそのクエストを受けることができません。
そのため1つのパーティがクエストを専有できる期間は短く、1週間挑戦してだめならなんと!自動的にそのクエストへ挑戦できる権利を失うのです。
他に挑戦するパーティが出てこなければ再挑戦も可能ですが、それには少し期間をおかねばなりません。
やはり一度クエストを受注したら、スマートに解決することが求められていると言えるでしょう。うーむ。
また、少しクエストに挑戦して自分たちには無理だと思えば、ドロップアウトしてクエストを早めに放棄することもできます。
ドロップアウトを早めにすると後述するペナルティが軽減されるメリットがあるそうです。
1つ。ペナルティについて。
誰かのパーティが達成できる見通しもないのに、いくつものクエストを受けては放棄、を繰り返しているとします。
すると適正なパーティが、こなせるはずのクエストを受けられずギルドが渋滞してしまいますね。
そこで受け皿となっているのがペナルティという制度。
受けたクエストを達成できなかったとき、専有期間の残り日数に応じてペナルティとして点数が課せられます。
パーティがクエストを専有している期間が長ければ長いほど、クエストを達成できなかった時に多くのペナルティが加えられるのです。
ペナルティの重さはパーティによって様々ですが、より多くのクエストをこなしてきた実績あるパーティほどペナルティは大目に見られるよう設定されています。
たしかに私たちのような駆け出しパーティが色んなクエストに手を出していたら皆さん困りますもんね。
ペナルティが一定の水準に到達するとまず執り行われるのは口頭注意。
それでも改善が見られなければ活動停止や降格などの処置も取られるそう。
せっかく大枚はたいてギルドに入ったんだもん。そんな扱いは避けたいところですな。
ちなみに受付嬢さんが教えてくれた、みんな公認の裏ワザがある。
気になったクエストは受注、挑戦して半日の間にドロップアウトすれば、なんとペナルティはないそうだ。
このワザは半日小僧と呼ばれるとか呼ばれないとか。
みんなこれで腕試しや素材集め等に難しいクエストを利用することもあるらしい。これは覚えておきたいね。
受付嬢さんはこれだけ私たちに寄り添って教えてくれた。
今からじゃあ半日小僧もできないし、クエストを達成できなかったときのペナルティが怖い。
駆け出しの私たちが低難度とはいえ、何日かクエストを専有してしまえば、それだけで口頭注意が見えてくる。
そうなれば今後のクエスト受注の動きやすさが相当制限されるという。
始めだから慎重に動いたほうが良いのではないか、という有り難いアドバイスだった。
ただ私たちもどうしてもこのクエストが受けたかった。
大ミミズならオカリナには御しやすい相手だし、後の障害がボスのみならむしろボーナスステージだ。
ここで誰かにクエストをかっさらわれて討伐されてしまってはせっかくの優良案件が元も子もない。
受付嬢さんには勝算があると無理やり押し切り、半ば強引にクエスト受注にこぎつけたのがここまでのお話だ。
「それにしてもこのお腹じゃ戦うに戦えないわね。
ゼリーは前回と同じくらいあるし、消化には日数が必要。
クエストの場所もそれなりの距離にあるから、この案件は次の休みに遠征に出て解決するわよ。」
フランはキビキビ予定を立ててくれて助かる。
リリエラは引っ込み思案だし、カナはしっかりしているようでときどき抜けている。
ゆえに彼女はオカリナの頭脳と言っても過言ではないかもしれない。
めいめい重い体を引きずりながら、3人の部屋の前まで帰ってきた私たち。
お別れを告げようとしたその時、何やら扉に貼り紙がしてある。
何々、通達とのこと。
小難しい文字はなかなか入ってこない私だが、いち早く文意を掴んだ才女リリエラが黄色い声をあげる。
「メグちゃんの相部屋申請の件が通ったようですよ!
これで私たち、この同じ部屋で寝泊まりできますねっ。」
おおぅ。やったー!
みんなと一緒に生活できるのは嬉しい限りだ。
「メグメグ……間違って誰かのお布団に潜り込むのは全然アリよ。
あ、私はその気はないのでノーサンキューでお願いします。」
はいはい。私もノーサンキューですよ。
「メグがきた記念にお祝いしたいけど、ゼリーもストックがあるからしばらく派手な飲食はきついわね。
メグ、全部の荷物の移動は今からだと一仕事だから、寝具と洗面用具だけでも運んじゃいなさい。」
「はーい。」
急いで現在寝泊まりしている部屋へと駆けていく私。
部屋は3人の所とはそう近くはないが、それでも同じ寮内。校舎を変え、階段を2つ登れば着くところにあった。
舞い上がっていた私は駆け足で私の部屋に飛び込む。
部屋に住んでいるのは私だけのはずだった。
「うわっと!」
誰もいないはずの部屋に誰かがいた。
私は思い切りぶつかり、お互いの額をぶつけてしまった。
もしや泥棒!?はたまた居直り強盗になる?!
暗がりの中、次第に目が慣れていくと複数の人影が見えてくるのだった。
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