第34話 ナツココくんの本領発揮
「す、すごい!これだけのアイテム、全部みなさんが稼いできたんですか?!」
ミナ冒険者商会商館の一隅にて、すっとんきょうな歓声をあげるナツココ。
今回もゼリーを詰め込み、下っ腹の膨れた私たちをチラ見したがナツココだが、彼はデリカシーのある子。
それには触れないでいてくれた。
まぁナツココが驚くのも無理はない。
借りてきた荷車にたくさんのスライムヘルムと核。とても壮観な眺めである。
今回も獲得できた全てのアイテムを持ち帰れたわけではなかった私たち。
しかし私自身の成長によるスキルポイントと、フランとカナの戦闘用に使っていたスキルポイントをそれぞれアイテムプールに振り直すことで、かなり改善があったのです。
プールの合計には以前タンタラ洞窟に来たときよりずっと余裕ができていたのだ。
リリエラもほくほくの笑顔を見せた収穫ぶりだ。
荷車はもはや大手の雑貨屋の仕入れと言われても遜色ないくらい戦利品で溢れていた。
「これ、スライムヘルムという稀少品ですよ……コレクター人気があってそれなりの値で捌けます。
こっちのスライムの核も薬に合成用素材と用途が様々で引く手あまたなんです。いい品物を仕入れましたね。」
ふむふむ。私たちの知っている情報ではあるけど、ナツココが正直に私たちに解説してくれているのが分かる。
これがトントさんなら、どうちょろまかされていたか分かったもんじゃないね。
「いやぁ、忙しくなるなぁ。各所に宣伝のビラを貼ってから出店を借りて、2、3日売りに立つのがベストなのかな……。」
ナツココはエンジンが入ったようで、いつの間にか分厚い眼鏡をかけ、算盤を狂ったように弾いている。
このお仕事はナツココの力を見るためにも、彼に任せておくのが良いだろう。
手の空いた私たちはこれからの自分たちの身の振り方の話をする。(私以外の)みんなは徐々に強くなっている実感はあるが次は何をすればよいのやら。
ダンジョンの話を1つ1つ嗅ぎ回って拾ってくるのもなかなか骨だ。しかもその多くは私たちの手に負えない案件。
ここからは情報戦。もっとざっくりたっぷり、色んな話を仕入れて吟味していきたいぞ。
と、そんな話をしているとナツココが手を止めて私たちにある提案をする。
「それならギルドに入られてはいかがですか?
ギルドなら自分たちの実力に応じたクエストが紹介されるらしいですよ。」
ほう、ギルド!
ゲーム世界なら切っても切り離せない要素ではないか。
確かにこれから戦う場所を見つけるのに加入しておいて損ということもないだろう。
でもギルドについて何も知らない私たち。そもそもギルドってどこにあるんだろう、と小首をかしげる。
すると、ナツココが、待っていて下さい!僕にはコネクションがありますから!と通路の角に消えていく。
しかる後に戻ってきたナツココ。
ギルドはここ、商会の建物の中に併設されているということだった。
次に気になるのはギルドの入会条件。お金はいくらいるの?ランク付けの条件は?約束事とかは?と疑問がいろいろ出てくる。
それにはまたもやナツココ。待って下さい、と同じく角に消えていく。
そしてちょっとして現れたナツココは、私たちの疑問に自慢気に答えてくれる。
お金はギルドに入会するのに商会の登録料と同程度かかるとのこと。
そしてランク付けは複雑なので、上がったり下がったりしそうなときはおいおいギルドから報告があるとのこと。
守らないといけないことは、他のパーティの邪魔をしない、期間内にこなせない依頼は受けない、ギルドのお達しがあれば守る、が主だとのこと。
ナツココありがとう。ありがたいんだけど……なんか、ね。
次に私たちの間で疑問に上がったのはギルドで受けるクエストの具体例についてだ。実際にどんなクエストをこなしていくことになるのか気になるところである。
「お答えしましょう!しばしお待ちを。」
ナツココが角に消えていく。
ア ヤ シ イ
そーっ、と角から顔を出す我らがオカリナ。
そこにはナツココの質問に答えているグルスさんの姿が。
グルスさんが答えてくれるなら、なぜわざわざナツココを挟まないといけないのだ。
しゃらくせえ。
ナツココを無視して質問を直接グルスさんに持っていく私たち。
かたやナツココは半泣きで、僕のぉ、僕のコネクションなんですぅ、とフランに縋り付いている。
自分の手柄として役に立ちたかったのだろうか。
残念だけど構っていられない。
「うるせぇ!俺はてめぇの質問箱になったつもりはねぇ!!」
グルスさんからも一喝を受け、しょぼくれながら計算に戻っていったナツココ。
君の活躍はしかる場所で期待してるから、こんなこと気にしちゃだめだぞ。
グルスさんはきさくに質問に答えてくれた。
「クエストの具体例?そりゃあダンジョン攻略にモンスター掃討に護衛、と様々だ。
まぁ、んなもんはギルドに入って実際に依頼を見てみるのが早いだろうさ。
ギルドに申請する手持ちはあるのか?だったら付いていってやる。」
幸いお金は足りそうだ。でもグルスさん、私たちに付き合ってくれるの?
「まぁ、前は忙しいのもあって構ってやれなかったからな。何事も助け合いだ。
お前らも成長したら俺に恩返しするんだぞ。」
いよっ、グルスさん、頼もしい!とやんややんやと踊りながら盛り上がる私たち。
グルスさんはそんな私たちを呆れて見ていたが、すぐに足を向き直し、受付へ歩みだした。
慌ててついて行くオカリナ一同。もぅっ、グルスさん、冗談が通じないんだから。
ギルドへの挑戦。それは私たちを新たなステージへと誘うのでしょうか?
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