プロローグ(後編)
自称神様との通話を終了した後、なんとも言えない脱力感に襲われた。
ただの生身の人間が、どうやってファンタジーの世界でお金を稼げるんだ。
僕は力なくスマホの画面を見つめた。
どうやら本当にこれしかないらしい。
スマホだけで何とかなるわけないじゃないか!
いつまでもここにいても仕方がない。
とりあえず人のいるところに行かないと。
でも、僕って怪しいよね……。
スーツにトラの仮面だよ?
ちょっと痛い阪〇ファンじゃないか。
僕なら絶対近づきたくない。
僕は再度スマホの画面に再度目を移した。
何か役立つアプリはないかな。
確か目的地はウメーディって言ってたな?
全然土地勘ないけど。どうしよう?
現実世界ならブーブルマップとか使うけど、まさか使えるわけないよね?
僕はブーブルマップのアプリを開いた。
ブーブルマップの画面がスマホに表示される。
あれ?僕の位置が示されてる?
これって使えるの?
僕はダメもとで検索に、ウメーディと入力する。
検索をかけると、僕のいるところから3㎞くらい離れた地点にウメーディとかかれたエリアアが表示されたのだ!
本当に使えるんだ。
ぼくは画面をまじまじと見つめた。
「ナビを開始しますか?」
スマホから機械音声が聞こえる。
しかもナビまでしてくれるらしい。
僕は「はい」を選択する。
すると僕の現在地から、ウメーディまでの経路が表示された。
特に入り組んだ場所ではない。今いる草原をまっすぐ歩いて行くと到着するらしい。
「徒歩で30分です」
ご丁寧にありがとう!
取りあえず、行くしかないよね。
こんな格好で街に入れてもらえるか不安だけど、ここにいても仕方がない。
僕はウメーディに向けて歩き始めた。
僕は歩きながらスマホのアプリをチェックした。
どうやら本当に転移する前から入れているスマホと変わりが無い。
ダウンロードしていたアプリもいくつか残っている。
これだけ見れば、本当に異世界にいるのか疑問に思ってしまう。
本当は日本のどこか別の地域に連れてこられただけじゃないのか。
あっ、チャットGOTまで残っている。
チャットGOTはチャットボットの1つで、AIを用いたチャットサービスの一つ。
様々な機能があると評判で、僕も導入したばかりのアプリなのだ。
僕はチャットGOTに、質問内容を入力した。
「僕がいるのは本当に異世界なの?」
・・・・・・
「虎谷満がいるのは、間違いなく異世界です」
えっ、何これ?
僕、自分の名前なんて入力してないよね?
僕は驚きながらも、再度質問内容を入力した。
「僕が本当に元の世界に戻れるか教えてください」
・・・・・・・
「虎谷満が元の世界に戻るためには、食レポを書く以外にありません」
やっぱり食レポを書かなきゃいけないんだ。
「50店舗を目安に食レポを作成してください。読者が増え、紹介店舗の人気が上がれば上がるほど早期に元の世界へ戻れるでしょう」
・・・えっ!?
それってどういうこと?
「キャァァァァ!」
突如前方から女性の悲鳴が聞こえてきた。
急いで声の方に向かってみると、少し離れたところで馬車が横転している。
あっ、馬車の周りで人が倒れている!
立っている人もいる!あっ、剣を持っているぞ。
しゃがみこんでいる女性もいる。悲鳴をあげたのは彼女だろう。
よく見てい見ると何かと戦っているようだ。
犬?狼?
どうやらあの人たちは、犬種の動物3体と戦っているようだ。
このままじゃやられてしまう。
なんとかしてあげたいけど、僕にはそんな力はない。
でもこのままっていうのも寝覚めが悪そうだ。
なんとかならないかな。
ぼくはチャットGOTに解決策を聞いてみた。
「彼らはウメーディの商人ギルドの人たちです。恩を売っておくと良いでしょう」
なんか生々しい回答が出て来たけど……本当にAI?
助けた方がいいんだよね?
でもどうやって?
僕には戦う力なんてないのだけど。
「名称ワイルドウルフ、本来は森に生息するイヌ科の魔獣で集団で狩りをすることが多いです。驚異度D~Eとなっています」
鑑定までしてくれるんだ。チャットGOTさん有能!
でもそれを知ったからって戦えるわけないじゃないか。
追い払う方法なんてるんの?
「ワイルドウルフは、突発的な出来事に弱いです。一体を倒せば逃げていく確率は83%です」
ふむふむ。ただ、どうやって戦えばええの?
僕にはどうすることもできない。
「スマホのカメラモードでワイルドウルフを画面の中に写します。スマホ画面でワイルドウルフを長押しすると、フリックができるようになります」
どういうこと!?相手を自在に操ることができるってことなの?
ものは試しだ。対峙中のワイルドウルフをスマホの画面内に入れてと。
ワイルドウルフたちは僕に気づいた様子もない。
僕はワイルドウルフをスマホ上で長押しを実施した。
すると地面からワイルドウルフの足が離れ、宙に浮かんだのだ。
本当に浮かんでる!
僕はワイルドウルフを長押ししたまま、上に向かってゆっくりと指を動かした。
僕がスマホで操作するのと同じように、ワイルドウルフも空高く浮かびあがったのだ。
突然のことで訳が分からず暴れるワイルドウルフ。
僕の指先に振動が伝わってくる。
思わずワイルドウルフから手を放してしまうと、空中に浮いていたワイルドウルフは制御が外れ、勢いよく地面に激突した。
「ワゥン」
苦し気な悲鳴を上げながらも立ち上がるワイルドウルフ。
どうやら僕に気づいたみたいだ。
3体とも僕に向かって突撃してきたのだ。
やばい、どうしよう。
思いがけない反撃に一瞬戸惑った僕だったが、僕に到達するまでには時間的に余裕があった。
僕は向かってるワイルドウルフたちの姿を全てスマホの中に収め、画面のページを代えるように、素早くフリックでワイルドウルフたちを画面外に吹き飛ばした。
見えない力で吹き飛ばされるワイルドウルフたち。
激しく地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。
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