「嗜好」


「すみません、先輩」客先への謝罪を終え声の主へとふり返る。彼は最近入った後輩でミスを何度も繰り返す。今にも泣きそうな顔にキュンとする。あぁ、ダメよ。この前別れた彼氏だってこんな感じで頼られてばかりだったじゃない。「頑張って先輩に頼られる男になります!」ごめん、そのままの君でいて。



「まただよ。ほら見て」すみません。先輩に心の中でも何度も謝る。一度仕事を完璧にしたら寂しそうな顔して褒めてくれた。でも違うみたいだ。オレが彼女にしてもらいたいのは。「私がチェックしなかったらまたミスだよ!」どうやら彼女に叱られたい。叱る彼女も嬉しそうなのはオレの気のせいだろうか。

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