265:博物館の構成を考えよう!後編
■エメリー
■18歳 セイヤの奴隷(侍女長)
とりあえず展示品の仮配置が終わりました。
同時にご主人様の<アイテムカスタム>による内装を施していきます。
屋敷と同じような照明やウォッシュ付きトイレの増設や改造です。休憩用のベンチなどは仕入れる必要がありますね。
一階
第一展示室:カオテッド大迷宮の概要
第二展示室:第一階層の解説、【領域主】の展示。
二階
第三展示室:第二階層の解説、【領域主】の展示。(前半)
第四展示室:第二階層【領域主】の展示。(後半)
第五展示室:第三階層の解説、【領域主】の展示。(前半)
第六展示室:第三階層【領域主】の展示。(後半)
第七展示室:第四階層の解説、【領域主】の展示。
第八展示室:なし
一階
第九展示室:ツェッペルンド迷宮の解説及び【階層主】【迷宮主】の展示。
第十展示室:風竜がドーンと。
結局このような形で仮置きしました。
第一階層は数が少ないので迷宮の概要と合わせようという話でしたがとりあえず分けます。
第二・第三階層は一部屋に収めても良かったのですが部屋も余っていますので分けました。
また、イーリス迷宮も攻略したので展示しようかという話も出ましたが、【迷宮主】がタイラントクイーンですからね。
二階層の展示と被ってしまいますし、解説だけ置くのもどうかと。ひとまず止めておきました。
「問題は第十展示室の風竜かなー」
「これ、そのまま置いておくわけにはいきませんよ。ドーンと」
「迫力はあるけど肉とか腐るでしょう」
「もったいないですネ! 早く食べないと!」
カオテッドを襲った【天庸】の一件にも関わっていますしカオテッドの住民にも分かりやすい。目玉と言えるほどのインパクトもある。
そういう意味では私も風竜の展示には賛成なのですが、皆が言うようにこのまま置くわけにもいきませんね。
ちなみに風竜の身体全部はこの部屋に入りきらないので、今は頭部だけが置かれています。
それでも部屋が半分以上埋まるサイズなのですが。
「頭だけか……って言うか剥製とか出来ないのかな?」
「竜の剥製ですか……狼などは聞いた事ありますが……」
「それか鱗とか牙とか剥ぎ取って、別に作った頭部の像に貼り付ける。あ、それなら剥製っぽいかな」
「頭部の鱗だけでも相当な数になるわよ……これ全部剥ぎ取って貼り付けて……めんどいわー」
「武器に使っちゃったから牙とか歯抜けなんですけど……」
「目とかどうするんですネ? 超貴重な素材だと思いますネ」
「そこはほら、それっぽい水晶とかで代用とか」
どうやらご主人様の中では頭部の剥製もどきで話が進んでいるようです。
こうなればもう決定されたも同然でしょう。我々に覆すことは出来ません。
しかしこのまま展示するよりよほどマシでしょう。私は賛成ですね。
「ご主人様、そうなると第十展示室は風竜の頭部だけという事でしょうか。大きさは十分なのですが少し寂しい気がします」
「そうだなー。手のひらとか飾るか? 展示室の壁から風竜の頭と両手が出てるイメージ」
「いやこの部屋じゃ無理でしょ。頭だけで一杯だわ」
「エントランスに飾ります? 両手だけ」
なるほど。博物館の入口からインパクトを与えるというのも良いかもしれません。
エントランスは行き帰りの人が合流するので、受付だけにするつもりでしたが装飾するのもアリですね。
ジイナの意見に賛同しておきます。
「じゃあ両手も剥製もどきにして、飾り付けは最後だな。とりあえず展示品としては頭部だけにしておこう」
「ですね」
あとは入口に注意書きやルールの立て看板が必要ですね。
解説の為の看板と簡易地図、それに展示品の解説看板ですか。
やる事が多いですね。侍女の皆にも存分に協力してもらいましょう。
さっそくその日の夕食時に報告がてら皆に協力を仰ぎました。
一部「えぇぇ」とか言い出した者は後ほど説教しておきましょう。
大多数は快く受け入れてくれました。ご主人様の命ですから当然です。
剥製もどきの件も相談し、以前にご主人様と共にミニチュアクイーンを製作したサリュ、ネネ、ティナはかなり乗り気でした。
ご主人様は博物館の全体を統括しなければなりませんし、剥製もどきは三人を中心に任せても良いのではないでしょうか。
「わーい、楽しそう! 私やるー!」
「ん。剥ぎ取りしないと。パティにも手伝わせる」
「えっ、あたい!? やった事ないですけど!?」
「これも訓練。これも経験。だいじょぶ。ちゃんと教える」
「ネネちゃん、鱗の剥ぎ取りの前にお肉とか腐りそうな所を捌かないと。錬金素材とかもあるし」
剥製もどきに使用するのは鱗や牙、角といった腐らない部位のみです。
それ以外は優先して捌き、手早くご主人様の<インベントリ>に戻さないといけません。
竜は他の魔物に比べ腐りにくいそうではあるのですが、それでも早いに越したことはありませんからね。
そうなると肉は料理。目玉などは錬金素材でしょうか。脳みそや舌などはどうすればいいのでしょうかね。
料理? 錬金? ここもまた相談ですか。
頭蓋骨はどうしましょうか……というか角も牙も頭蓋骨にくっ付いているんですかね?
ならば頭蓋骨の展示にした方が楽なのでは……いえ、剥製もどきにするのは決定なのです。
余計な事は言わないようにしましょう。
他の侍女たちの動きとしては、ジイナやユア、アネモネは魔竜剣の事もあるので難しいのですが、その他の者は迷宮に行くのも最小限、家事も最小限にしつつ博物館のお手伝いに着手します。
私もリンネの教育は一度切り上げ。
というかリンネは展示品の置き方、見せ方にセンスを発揮させていたので、むしろ博物館のお手伝いに回すべきです。
しかしどこか独特のセンスも持ち合わせているので全てを任せるわけにはいきません。
総合神殿で【芸術の神メタポリス】様の神像を作る時なども、最初のデッサンの段階から意味不明なものを描いていましたからね。
「あれ? メタポリス様って人型ですよね? これ【海神アクアル】様じゃないですよね?」
「どう見てもメタポリス様ですネ! ここが頭でここが手で……」
「どれも触手に見えるのですが……」
そんな一幕もありました。
こんな神像を作ったらそれこそ神託で怒られそうです。神の怒りを買うわけにはいきません。
リンネの芸術センスは確かに他の侍女にないものを持っているのですが、自らが作るものに関してはかなり独特なものになるようです。歌とか絵とか。
今回、展示品と共に飾る立て看板に、展示品の解説と図解を書くようにご主人様から言われました。
解説はともかく図解は娯楽室にある魔物百科にも多少は載っています。
しかし実際に戦った我々で描いた方が良いだろうと。
最初、ご主人様もリンネの芸術センスを期待して、リンネも戦った事のあるゴブリンキングを描かせたのです。
ところが……。
「あれ? ゴブリンキングって言ったよな? なんでスライム書いてんの?」
「スライムじゃないですネ! どう見てもゴブリンキングですネ!」
「どう見てもゲル状物質なんだが……」
ご主人様もリンネに描かせるのは諦めたようです。
求めているのは抽象画じゃない、写実画だと。
どうもご主人様のいらした世界には『抽象画』というリンネのような絵を評価する概念があったようです。
なるほど、一部には評価されるセンスという事なのでしょうか。理解はしかねますが。
ともかく、そうしたわけで図解の担当は私になりました。
私に絵心などないのですが、他に適した者も居ないので描いてみます。
ご主人様からのご指名ですからね。誠心誠意、頑張って描いてみましょう。
まずは試しでグレートウルフを。スラスラ~っと。
「うっわ、めっちゃうめえ! なんだこの躍動感!」
「恐れ入ります」
「こ、これはすごいですネ! 私より芸術的ですネ!」
「売れますね。売れるレベルですよこれ」
「王城の絵師にも引けを取りませんね。さすがエメリーさんです」
「
「いやエメリーは
最後のツェンは後でお説教ですね。
器用なのはご主人様に<カスタム>して頂いたおかげですので、この絵に関しても私どうこうではなく、ご主人様の手腕と言えるでしょう。そこをお間違えなく。
ちなみに今日、私に<絵画>スキルが生えたようです。
いつもの事ですね。
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